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六話 落ち込んでる人

前話「タマちゃん」に異世界の名前がアリスレンティアであるという記述を追加しました。

他に変更した箇所はないので、読み返さずとも問題ありません。

固有名詞がないと「あっちの世界」とか「こっちの世界」とか、作者ですら「いや、どっちだよ!」てくらいに分かりにくかったので。

なにとぞご了承のほど、よろしくお願いします。

現状に対する理解がまだ追いついていないものの、その場で思いついた質問は一通り出来たので、俺は天彦達を探すことにした。


 しかし……。


「さすがに王様の住まいだけあって、広すぎるな」


 うん、まんまと迷子になってしまった。

 というか、どこもかしこも暗すぎるってのも原因だよな。


「ヘイ、タマちゃん」


「なにかご用でしょうか、ジメイ」


 俺がスマホに向かって呼びかけると、すぐにタマちゃんから応答があった。


「そういえばさ、なんでこんなに暗いんだ?」


「夜とは暗いものですよ、ジメイ。それはアリスレンティアでも変わりません」


 いや、そうじゃねーよ。


「一回目に来たときはもう少し明るかったのに、二回目に来たらいきなり夜になってるじゃん。なんでなんかなって」


「それは、時間の流れ方が異なるからだと推測されます。アリスレンティアでは、ジメイが最初に訪れたときから数えて七日目の夜となっています」


「はあ!?」


 ほんの二十分前後の間に、こっちは七日も進んだってことか……!?


「理解しやすいよう大雑把に言ってしまうと、時間の流れ方は二つの世界の距離によって常に変化しています。今は二つの世界の距離が比較的安定しているので、チキュウがアリスレンティアを追い越すことはありませんが」


 速度の差はまちまちだけど、基本的には地球よりアリスレンティアのほうが時間の経過が早いってことか。


「てことは、今もこっちの世界は結構な速さで進んでるってことになるのか?」


「いいえ、ジメイがこちらに精神を飛ばしている間は、ジメイがイカリのような役割を果たし、時間の流れ、つまり二つの世界の距離感を同調させているようです」


 つまり、俺がこっちにいる間は、時間の進み方は同じってことなのね。でもそれってさ……。


「俺の体は大丈夫なん? なんか負荷とかすごそうなんだけど。悪影響とかあったりしないよな……」


「前例のないことなので確かなことは言えませんが、大丈夫ですよジメイ。ええ多分」


 多分かーい。

 いきなり老けだしたり、いきなり体が引き裂かれたりしないだろうな……っ。


「分からないことはどうしようもありません。前向きに行きましょう、ジメイ」


 なんてこった、スマホアプリ(元聖具)に諭されてしまった。

 でも確かに、分からんことはしょうがないか。怖いけど。


「んじゃまあ、出来るだけ考えないようにして天彦達を探すとするか。タマちゃん、天彦達の居場所は分からん?」


「メニューから名前を入れて検索するか、私に問いかけて頂ければ所在は確認出来ますよ。探しますか?」


「おおおお出来るんだ。まじかよタマちゃんすげえ便利だな」


「変質してしまったとはいえ、元は〈聖剣〉と並ぶ特上級聖具ですのでこのくらいは当然です」


 俺の賞賛に、タマちゃんは心なしか得意げな声色でそう返した。


 そういえば王様達も、特級だの特上級だの言ってたっけ。

 よく分からんけどすんごいんだろうな多分。


「それじゃあタマちゃん、天彦の居場所を頼む」


「位置を確認しました。アマヒコさんの居場所までジャンプしますか?」


「ん、ジャンプ? てまさか、転移出来るってこと?」


「肯定です、ジメイ。ジメイは精神だけの存在ですので、位置が指定できれば転移くらい造作もありません」


「な、なんだってー!」


「言うなれば肉体は地球に置いたまま、聖玉アプリの〈見通す〉力を通してアリスレンティアの景色だけを見ているようなイメージでしょうか。厳密には精神だけアリスレンティアに来ているのですが」


「VRのヘッドセットをつけてるみたいなもんなのか……」


「その認識で問題ありません」


 だから壁や人をすり抜けることが出来るってわけなのねー、納得。

 しかしほんと、タマちゃんが高性能過ぎて怖い。



「では、アマヒコさんの現在位置までジャンプします」


「うん、お願い」



 ――本当に一瞬で視界が切り替わった。


 ゲームとかだとエフェクトやら読み込みが入ったりブラックアウトしたりするけど、そういうの一切なしでいきなり切り替わるから少し戸惑ってしまうな。


 さて、それじゃあ天彦は……。


 うん、ベッドに腰かけて項垂れてるな。

 なんというか、ドヨヨーンって音が聞こえてきそうなほどに落ち込んでるのが見て取れる。

 オーギュスト・ロダンがこの天彦を見たら「落ち込んでる人」て名前のブロンズ像を作り出しそうなくらいの、それはもう見事な落ち込みようだ。


 ここは天彦のために用意された個室なんかな。

 それなりに広いし、それなりに整ってる。ベッドのシーツも、見たところ清潔そう。


 不遇な扱いは受けてないみたいだけど……なんでコイツはこんなに落ち込んでんだろ。


「クソ、なんで上手くいかないんだ!」


 うわ、びっくりした。天彦が突然怒り出した。

 情緒不安定か。


「このままじゃ、僕は……っ」


 唸るように呟く天彦の顔を覗いてみたら、しかめっ面で目尻には涙が溜まってきていた。ほんとすぐ泣くなコイツは。


「ヘイ、タマちゃん。一応聞くけど、天彦がなんで怒ってるのかわかったりする? 心の中を覗けたりとか」


「ジメイ、プライバシーという言葉を知っていますか?」


「……あ、はい。すいません」


「心の中を覗くことは出来ませんが、原因を探ることは出来るかもしれません。この七日間での出来事が原因と推測されますので、その出来事を観察すればなにか分かるのではないでしょうか」


「……どうやって?」


「〈ログ〉の機能がそれに当たります、いわゆる過去ログですね。ログの機能で対象を指定すれば、その人物の時間を遡って観ることが可能です」


 すげぇええええ、てかこぇえええええ。なんなんだそのストーカー御用達の機能。


 相手の居場所を割り出すことが出来て、そこに瞬時に移動することが出来て、それで過去まで調べ放題とか、なんかストーキングするためのアイテムとしか思えないんだけど。しかも俺、こっちの世界だと相手からは見えないし。


 ほんと、うちのクラスに気になる相手がいなくて良かったわ。もしいたら俺は、自分自身の欲望に打ち勝つことが出来なかったかも知れない。


 さて。

 んじゃまあ七日の間に、一体なにがあったのか覗いてみるとするか。

 完全にプライバシーの侵害だけど、まあ天彦だしな。うん、問題なかろう。

ストーカーはダメ、ゼッタイ。

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