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――――ピピピピピピ

 時計の音で目が覚めた。

「眩しい・・・」

 僕は机に突っ伏していた。どうやら勉強している間に寝てしまったらしい。

 カーテンを開け外を見ると制服姿で全力ダッシュをする人や、朝の談笑をする人がちらちら目に入った。

 今日も良い朝だ。

――――ん?

 制服姿?

・・・恐る恐る時計を見てみる

《8:20》

「さて、朝飯はなににしようかな」

 ちなみに、学校の朝礼の時刻は8:50である。

 この時間から急いで準備をしても間に合いそうに無いのでゆっくり登校することにした。


――――――――――――――――――――


 学校に到着した。ここは校門とか、そういう物がないから遅刻したときはありがたい。

時計を見ると、まだ授業が始まっていないみたいだ。

 一時限目は何だったろうか?などと考えながら窓辺の高い木に登る。この木は遅刻したときに窓から入るのに便利な場所だ。

 窓までそこそこ距離があるのが難点だけど。

「よっと」

 木から教室に転がりこむと、目の前に仁王立ちしている人物が一人いた。

「遅刻だぞ、ヴァリー」

 ヘッドスライディングの要領で滑り込んだ僕の頭上から怒られる。

「まだ授業始まってないからセーフだろ」

「何がセーフだ!とっくにHRは終わってる」

 無視して起き上がる。

「大体何故いつもいつも窓から入ってくるんだ?普通に昇降口から入ってくれば良いだろうが!」

「そしたら先生に見つかるだろ!!」

「何で半ギレなんだよっ!!」

 そう言って顔に手を当て面倒臭そうな顔をする。

 この、いかにも優等生のような物言いのコイツは、グリフト=ウィンヴィー。言うことは優等生なんだけど、目つきは悪いは、態度は悪いはでよく絡まれる。

 学校は私服登校だ。彼はスーツを着崩したのような服装をしている。

 彼とは幼なじみの仲だ。

「ところでグリフィー」

 グリフィーというのはグリフトの愛称だ。

「なんだ?」

「今日の一時限目ってなに?」

「……………」

 沈黙。何かまずい事でも言ったかなと思ったが、グリフィーは心底呆れたような視線を向けて言った。

「昨日あれほど言っておいただろ・・・・・」

「だから何だってば」

「今日は授業はない。一日潰してチームの戦技実習だ」

「あれ?そうだっけ」

「そうだ。ほら、早く支度をしろ。そろそろ時間だ」

 グリフィーに続いて歩く。

 魔術―――

 誰にでも備わっている能力。力の差はあるけど皆何かしらの力は持っている。

 既に形を成している物に魔力を通して、形態、性質等を変化させる物質魔術。

 五大元素などの自然の力を統括、制御する自然魔術。

 その他に様々な様式があるけど、大分すると先に挙げた二つに分かれる。

 更に魔術は“魔力"と呼ばれる力を素にすることが多い。

 世界に存在するあらゆる事柄には必ず何かしらの力を持っている。または働いている。

 そういった力を集めて、自分の体などを通して自分の力に出来るようにしたものを魔力という。

 魔術を有用に使う術を学ぶ授業を魔術講習と言い、その中でも特に魔術を使用した戦闘技術についての実習を行うのが戦技実習だ。

 戦技実習にも色々な種類があり、今日は3人一組のチーム毎に分かれての魔術戦闘をやる。

 グリフィーに話を聞くところによると、今日は野外グラウンドでの実習らしい。

――――――――――――――――――――


グランドに着いた。既に多くの人が集まっていたが目的の人はいない。

「まず、ユニを探すか」

 相槌をうって周りを見渡すとユニはすぐに見つかった。

「おーい」

 手を振ると、ユニが笑顔で走ってきた。

「遅いよ二人とも」

 笑顔を向けながらそんな事を言う彼女は僕達の友達だ。肩まである銀髪がなびく。

 僕達がユニと呼んでるけど、本名はユニス=レン・フォラント。

 黒いローブ状の服を着て、首から真っ白な十字架をかけている。

 いつも楽しそうな笑顔が眩しい。

 あることを境に仲が良くなって今に至る。

「いや、すまない。少しヴァリーに説教していた」

「なんだ、ヴァリー。またなんかしたの?」

「また遅刻をしてきたんだ、こいつは」

 頭を小突かれた。

「いや、授業始まる前だったからセーフだろ」

「あはは、ヴァリーらしいね」

「笑い事では無いだろう。大体何故早く起きようと努力しないんだ…………ぶつぶつ」

 なにやらぶつぶつ言っているグリフィーを置いて集合場所に急ぐ事にした。

「………そもそも生活習慣というのはなぁ、あ、まて二人とも」

 グリフィーも慌てて追いかけてきて、三人で集合場所へ向かった。


―――この二人と居ると、たまに僕はこの二人と居て良いのか?

 そう、疑問に思うことがある

 実のところ、僕は魔術が使えない。

 皆が魔術が使える世界。

 だけど何にも例外。

 ‘もしも’が存在する。

 だから僕のように魔術が使えない人がいることもあるわけだ。

 まぁ僕の他には聞いたことはないけど…………。

 魔力を探ったり、視認する事は出来るけど、他は全く何も出来ない。

 ユニとグリフィーは学内でも指折りの魔術師だ。そんな中に文字通り何の才もない僕が居る。だけど、僕はやれることをやる。

 やるしかない―――――

 

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