専門科いきます。
私は声優を職業にしているので、学校での専門科は勿論声優科だ。
仕事的には未だにちょい役とか脇役だけど、ちょくちょく役を増やして少しは声優としてやっている。
今はまだまだ未熟で若輩者だけど、何時かは有名になってやる!と生き込んでいたりします。
因みに声優科の活動内容は発声練習や表現力を鍛え、本格的な稽古をしています。
「あ、え、い、う、え、お、あ、お!」
「もっと大きな声で!」
これ、練習風景です。
お腹に手を当ててお腹から声を発します。
基本はとても大事なことで、誰もが真剣に取り組んでいる。
発声練習の後、うっすら掻いた汗を拭いていると隣に座る気配。
「ん…」
いきなり差し出されたのは未開封のミネラルウォーター。
それが誰の仕業なのかは、毎度のことなので隣を見なくても解るけど、とりあえずお礼をするために振り向く。
「ありがとう。今日は仕事ないの?祐太郎さん」
「あった。けど時間あったから、来た」
「確か祐太郎さんって、あの有名ゲームの主人公役だよね。発売したら買ってやるね!」
「ん…」
彼は今やアニメ業界では知らない人はいないと言われている人気声優であり、攻略対象者の柊祐太郎。
必要以上に話をしないのは、喉を壊さないための処置なんだとか。
プロ根性は凄いといつも思う。
でも無口になるのはいいけど無表情でいなくてもいいんじゃないだろうか。
只でさえ銀髪に耳にピアス、鋭い目付きが怖いというのに。
ファンはそんな所もクールでビューティフル!美形はなんでも許されるわ!と言っていたのを雑誌で見た。
そんな彼と新人みたいな私がなんでこうして話すようになったのかというと、同年代で声優として有名な彼に憧れた私が勝手に話しかけたのがキッカケ。
攻略対象者なのになんで近付くのかって?
同じ声優を職にしている人を、そんな理由で遠ざけないよ。
一緒に高みに登り詰める為に、協力したいからね。
…って私が一方的に考えてるだけなんだけどさ。
「あ、そうだ。…ん」
「…?」
マイペースらしい彼から手渡されたのは、一冊の台本。
「あああ!!?こ、これって、この前私がオーディションを受けたあのアニメの!」
祐太郎さんに渡されたのは数週間前に受けたアニメの台本だった。
そういえば、彼も主人公の相手役のオーディションを受けたって言ってた筈だ。
「わぁ…!祐太郎さん受かったんだ!おめでとう!いいなぁ、私はまだ何も来ないから…また落ちたのかな…」
「え…?」
「え?」
訳分からないといった風な彼は、私から台本を取り上げページを捲り開いたページを見せてきた。
「ここ」
「キャスト一覧?…、………え?…ええええ!?」
そこには私が受けたキャラクターの下のキャスト名に私の名前があった。
初のメインキャラクターの声優に選ばれたのを知った瞬間でした。