5-3復活のタンゴ
力の奔流が収まった時、アポロは深い疲労感と共に、膝をついた。
Skil 3の能力は、完全に「占有」された。
だが、Skil 1(治癒)と Skil 2(戦闘)の能力は、まったく問題なく、彼の内に残っている。
彼は「戦う男」としての能力を維持したまま、水面下では、愛する人の魂を永遠に繋ぎ止め続けるという、たった一つの奇跡を実行し続けることになった。
その時、祭壇に横たわっていたティナの身体(シルクの魂)が、ゆっくりと目を開けた。
その瞳は、紛れもなく、アポロの知るシルクの、強い光を宿した琥珀色だった。
そして胸元の呪いを刻んだ黒い薔薇は青い薔薇へ変化していた。
「…アポロ…? アタシ…死んだんじゃ…」
「…おかえり、シルク」 アポロが手を差し伸べた、まさにその時。
「突入!!!」
「「「「「殺せ!」」」」」
「アレリウス男爵様はご無事か!」
「他の生き残りは全て殺せ!抹殺の命が出ている。」
古城の玉座の間の扉が蹴破られ、あらかじめ用意され厳しい訓練と洗脳を経た屈強な精鋭、しかも命を縮める劇物的なポーションによって「強化」されたおよそ100名が雪崩れ込んできた。
彼らは、探す男爵が既に頭部のない亡骸となっていることにも、仮面をつけていた女が起き上がったことにも気づかず、仮面の呪いによって動揺していると聞いていたアポロと相対する好機と見た。
「…チッ。団体客か!!」 アポロは、シルクの前に立ち、魔導銃サンダーボルトを構えた。
「シルク!! 立てるか」
「…ああ。アンタ何やったんだ。身体は…妹?のものみたいだが、魂はアタシのままだ。力も、感覚も!」
シルクは、傍らに落ちていた自らの双剣(自死に使った剣)を掴み、アポロの背中に並び立った。
その時、屈強な兵士たち100が二人を包囲殲滅せんと当初の命令通りに取り囲む。
「ふっ…説明は後だな。」
「今やることは一つだろ?」
シルクが、名状しがたい美しく獰猛な笑みを浮かべ双剣を身構える。
もし第三者がその笑みを垣間見ることができたなら背中を這い回るめくるめく戦慄にのたうち回るしかないと感じさせるほど優美で美しい笑みだった。
「あぁ、そうしているときが一番美しい」 アポロの隻眼が、敵兵を捉えた。
「――派手に踊ろう。俺たちの、新しいタンゴだ」
そう言ったときには加速を終え、既に7名ほどの頭部を吹き飛ばし後だった。




