4-5死神
「シ…シルク…」 アポロは、目の前で起きたことが信じられず、その場に立ち尽くす。
愛する女が、自分を守るために、自らの命を絶った。
ティナの亡骸に重なって、シルクの亡骸が横たわっていた。
「ハ…ハハハ! ハーッハッハッハ! なんという無様! なんという喜劇だ! 結局、二人とも犬死にか! 最高のショーだ、隻眼! 貴様、愛する女に、目の前で死なれた気分はどうだ!」
「しかし隻眼を呪い殺せなかったのは興ざめでございました。」
筆頭執事の狂気の追従が続いた。
玉座で、アレリウス男爵が腹を抱えて高笑いしている。 その笑い声でなく「興ざめ」という音声が、アポロの耳に届いた瞬間、彼の内側で何かが音を立てて切れた。
「…!!」
アポロの身体から、凄まじい魔力の圧が放たれる。
自己の「内的」加速。
だが、それはもはや彼の知る加速ではなかった。絶望と悲哀が引き金となり、彼の能力が変質していた。 世界から、色と音が消える。
アレリウス男爵の笑い声が、超スローモーションになる。 アポロは、ただ、歩いた。 その一歩が、玉座までの数十メートルをゼロにした。 高笑いと追従笑いを続けるアレリウス男爵と執事は、自分達の目の前にアポロが立っていることに、まだ気づいていない。
アポロは、サンダーボルトの銃口を、アレリウスの眉間に押し付けた。 ここで、アレリウス男爵の時間が、ようやく追いついた。 彼の瞳が、目の前の死神を認識し、恐怖に見開かれる。
雷鳴が二発轟いた。
アレリウス男爵と筆頭執事の頭部は、悲鳴を上げることすら出来ずに消し飛んだ。
アポロは、もはや何の感情の色も見いだせない隻眼で、ぶっ飛んで肉塊となったアレリウス男爵と執事の亡骸を一瞥すると、ゆっくりとシルクの元へ歩み寄った。




