4-4絶望-さようならアポロ
妹の死。 その絶望がシルクの心を凍らせた、まさにその刹那。
シルクの傍の仮面が、赤黒い光を放った。
呪いは、まだ終わっていなかった。
ティナの魂は失われたが、呪いの「起こり」はシルクに移り、黒い薔薇がまさに開花しようとしていた。
そして、シルクが最も執着するアポロを「終点」とする呪いの経路が、今まさに確立されようとしていた。
「…あ…」 シルクは理解した。 ティナは死んだ。
だが、呪いは消えていない。
自分が生きている限り、アポロは呪われる。
自分がこの男を愛してしまっている限り、この呪いは彼を破滅させるまで止まらない。
妹を失い、愛する男も破滅させてしまう。 そんな未来は、耐えられなかった。
「ククク…どうやら妹の魂は死んだようだが、呪いは貴様を選んだぞ! さあ、その男を呪い殺せ!」
アレリウス男爵が狂喜の声を上げる。
「…アポロ」 シルクは、ゆっくりと立ち上がった。その手には、自らの双剣が握られていた。
「シルク、よせ。」
「…だめだ」 シルクは、アポロを見つめた。
その瞳は、絶望の底で、あまりにも澄み切っていた。
「…あんたは、アタシの光だった。…だから、アタシがあんたを汚すわけには、いかない」
「何を言って…」 アポロが言葉を失った。 シルクは、その双剣の切っ先を、自らの胸に向けた。
「さようなら、アポロ」
躊躇は、なかった。 彼女は、呪いがアポロに届く前に、自らの生命(=呪いの起点)を断つことを選んだ。 双剣が、シルクの胸を深く貫いた。
「シルクゥゥゥゥッッ!!」
アポロの絶叫が、玉座の間に響き渡る。
シルクは、貫かれた胸から血を流しながら、最期にアポロに向かって微笑んだ。
「…これで…あんたは…自由…だ…」 その身体が、ゆっくりと床に崩れ落ちる。




