4-1 古城
アポロとシルク、そしてオーウェル辺境伯の騎士たちがたどり着いた獣人族の集落は、地獄と化していた。建物は焼かれ、血と硝煙に染まり、正視に耐えず吐き気を催す無残な亡骸があちこちに転がっている。
「ひどい…」
シルクは唇を噛み締め、震える身体を抑えきれずにいた。
アポロは冷静に状況を分析する。
「…手際が良すぎる。ただの賊じゃない。足跡と状況から推測すると訓練された屈強な100名程の兵士の仕業のようだ」
辺境伯の騎士たちも、その惨状に言葉を失い、静かな怒りを燃やしていた。
「隊長! 生存者です!」
一人の騎士が、半壊した地下牢から、鎖に繋がれた兵士を引きずり出してきた。それはアレリウス配下の兵士だった。
アポロが、その兵士の前に無言で歩み寄る。
隻眼が、氷のように冷たい光を放つと出力を絞ったサンダーボルトを間髪入れず四発放った。
兵士は、四肢に穴を開けた恐怖に顔を引きつらせ、失禁しながら最初に指示されたシナリオ以外も含めたすべてを白状していた。
「…アレリウス男爵様は、ここから西にある古城を拠点に…! 生き残りの娘も、そこへ連れて行く手配でした…! あれは罠です! 男爵様は、あんたたちを誘き寄せるために…!」
「そうか」
アポロは短く応じると、兵士の首筋に手刀を叩き込み、気絶させた。
「古城か…」
アポロは、辺境伯の騎士隊長に向き直った。
「オーウェル卿への報告を頼む。俺とシルクは、先行して古城へ向かう。
『賊』の首領を討ち、人質を救出する」
「しかし、臨時騎士殿! 罠だとわかっていて二人だけで行くのは無謀だ!」
「多人数では潜入できん。それに…」アポロはシルクの肩に手を置いた。
「これは、俺たちのレクイエムだ。他人に踊らせ唄わせる気はない」
シルクの瞳が、アポロを捉える。そこには、感謝と、覚悟が宿っていた。
騎士隊長は一瞬ためらったが、アポロのただならぬ気迫に圧され、頷くしかなかった。
「…ご武運を。本隊もすぐに後を追います」




