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毀(こわ)された目論見


王都の司法府。

月明かりだけが差し込む首席判事の私室で、アレリウス男爵が忌々しげに報告をしていた。


「…申し訳ありません。ドレフィスの作戦は失敗。ゲルニアの利権は、我らの手を離れました」

「あなたの駒の管理が甘いからですな、男爵」


闇に溶けるような法衣の男──首席判事は、表情を変えずに言い放った。

その声には、温度というものが感じられない。


「元凶は、『隻眼』と名乗る傭兵と、獣人の女だとか。そしてその二人が、今やシルバラードに流れ着き、オーウェル辺境伯が彼らを歓待していると?」

「は。そのようで…」

「辺境伯の庭で、飼い主のわからぬ猛犬が二匹もうろついているのは愉快ではありませんな」


首席判事は、ゆっくりと立ち上がると、窓の外に広がる王都の夜景を見下ろした。


「厄介事は、芽のうちに摘み取るに限る。辺境伯の力を削ぐことと、忌々しい傭兵上がりの処理。この二つを、同時に片付けねばなりますまい」

「…はっ」

「…害獣は、静かに、そして確実に駆除せねば。わかりますね、アレリウス男爵」


その冷たい視線を受け、アレリウスは深く頭を垂れるしかなかった。


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