2-2「承知いたしました。必ずや、閣下のご期待に応えてみせましょう。」
グルニア平原からの撤退戦。
その混乱の極みにあった司令部の天幕で、アポロとシルクは傭兵連合軍のドレフィス総司令官と再度向き合っていた。
放っていた斥候からの情報により、さらに魔法師団も投入されたことが判明し、戦局はさらに悪化の一途を辿っていた。
ドレフィス総司令官は疲労と苦悩を顔に貼り付け、悲壮な声で切り出した。
「作戦を伝える。誰かがやらねばならないことなのだ。…すまないが、君たち二隊にしか、もう頼れない。」
総司令官は地図の一点、両側を崖に囲まれた『蛇の腹』と呼ばれる渓谷を指し示した。
「本隊が安全圏まで撤退する時間を稼ぐため、ここで敵の追撃を食い止めてほしい。…無茶で無謀な任務であることは、重々承知している」
男は一度言葉を切ると、アポロたちの目を見て、溜息をついた。
「だからこそ、これは私の独断だ。報酬はさらに追加で破格の二倍を前金で支払う。この金で、どうか…どうか、連合軍の活路を切り開いてはくれまいか!」
その言葉には、将としての苦渋と仲間を想う熱意が込められているように聞こえた。
シルクは、その破格の報酬額と司令官の懇願するような態度に、一瞬だけ表情を緩める。
だが、隣に立つアポロの空気が、氷のように冷えていることに気づいた。
アポロは、司令官の目の奥、演技では隠しきれない爬虫類のような冷酷さを見抜いていた。
これは懇願ではない。不要な駒を、最も効率的に、そして罪悪感なく切り捨てるための儀式だ。
アポロは全てを察したが、その芝居にあえて乗ることにした。
「承知いたしました。必ずや、閣下のご期待に応えてみせましょう。」




