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2-1「ふざけるな! 一緒に戦ったあたしらを使い捨ての駒にする気かい!」


ゲルニア平原の戦いは、泥沼の消耗戦へと姿を変えていた。

降り続く冷たい雨が兵士たちの体温と士気を奪い、泥濘と化した大地が鬨の声すら飲み込んでいく。

アポロとシルクの傭兵団がどれだけ奮戦しようと、兵力差と総指揮官の質的差が横たわり大局は動かず劣勢であった。

しかも敵国が、切り札である正規騎士団を投入したことで、傭兵連合軍の戦線は脆くも崩壊した。


「…総員、退却! 西の渓谷まで後退し、再編を待て!」


ドレフィス総司令官の絶叫にも似た命令が、敗走する兵士たちの背中を打つ。

その混乱の中、アポロとシルクは司令部の天幕に呼び出された。

地図を睨む司令官の顔には、焦りと疲労が色濃く浮かんでいる。


「…貴官ら二隊に、殿しんがりを命ずる。作戦は追って知らせる。」


それは、死刑宣告とほぼ同義だった。味方が安全圏まで撤退する時間を稼ぐための、生贄の役。

ドレフィス司令官も司令部全体もは、厄介者である流れ者の傭兵団を、使い捨てることに何の躊躇もなかった。


「ふざけるな! 一緒に戦ったあたしらを使い捨ての駒にする気かい!」

シルクが激昂し、腰の剣に手をかける。

その肩を、アポロの無骨な手が静かに押さえた。


「…報酬は、3倍。即金で貰う」

アポロは、感情の読めない隻眼でドレフィス司令官を射抜きながら言った。

その瞳の圧力に、ドレフィス司令官は思わず頷いてしまう。

「わ、わかった…頼むぞ!」


天幕を出ると、シルクがアポロに食ってかかった。

「あんた、正気かい!? あんな条件、呑むヤツがあるか!」

「最悪の状況には違いない。だが、そう悪くもない。」


アポロは降りしきる雨を億劫そうに手で払い、

シルクの瞳を見つめ

シルクの肩を掴みながら、たぎるような心で言った。

「・・俺達は傭兵だ。外道の傭兵だ。そう無頼の傭兵さ。だが、俺達は生きている!!

死地の真っ只中にいることも間違いないがこの戦局を引っくり返し、いろんな連中の思惑を蹴飛ばしてやろう!」


その言葉に、シルクは一瞬虚を突かれ、そして不敵に笑った。

「へぇ、最高にゾクゾクするじゃないか!あんた、やっぱりアタシと同じイカレてるヤツだ、隻眼!」

「自由奔放に!ド派手に踊ろう! モフモフ。」


互いの瞳に、昨日までとは違う、共犯者のような光が宿っていた。


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