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36 仮面の剣士

 まだ馬車に揺られている感覚が残っているのか、足がふらついていた。

 クボちゃんが手にしている光り輝く剣は、以前見た時よりもなんだか弱々しい。


 光をまとった聖剣っぽさはあるものの、今にも消えてしまいそうな程に弱々しい。状態異常の影響が剣にも出ているのだろうか。


「おらぁぁ!」


 ふらつきながらも剣を構えるクボちゃんに、帝国甲冑兵が襲いかかる。

 見た目は非常に動きにくそうな甲冑兵だが、意外に動きが機敏だ。あっという間に間合いをつめてクボちゃんに迫る。


 振り下ろされる甲冑兵のロングソードが空を切る。


「いったぁぁぁぁい」


 不意打ちを突かれたクボちゃんは最初の一撃はなんとか交わしたものの、もう一人の甲冑兵の攻撃を食らった。


「大丈夫ですかクボちゃん。今、回復魔法を……」

 だが幸いにも肩を少しかすめただけで済んだようだ。

「いや、これくらい平気よ。逆に気持ちがシャキッとした。よぉし!」


 さすがは元剣道部。試合ともなると目付きが違う。いや、試合じゃないな。文字通りの「真剣」勝負だ。


 そこにはいつものヘラヘラクネクネしていたクボちゃんはいなかった。青白く輝くロングソードを構えた鬼気迫る剣聖クボがいた。


「剣聖クボ、参る!」


 勝負は一瞬だった。以前港町で見せていたあの勇姿の再来である。


 光輝くロングソードを一振りすると、あっという間に甲冑兵二人を薙ぎ払った。反撃はない。倒れた甲冑兵は気絶したようだ。


 警備兵の制服を着た司令官らしき男がその様子を見ていた。


「ええい、なにをやっているんだ。使えない兵隊だな」

 と呟くと、今度は仮面をつけた剣士の男が近づいてきた。


「あれは、王国側の転移勇者だ。下っ端の甲冑兵では手も足も出ないだろう。私が相手をしよう。その間に、あなたは馬車ごと空間転移術式を……」


「分かった。ここはお前に任せよう」


 ゆっくりとこちらに歩いてくる仮面の剣士。長い黒髪をなびかせて剣を持つその姿は、さながら侍のようでもあった。


「望む所だ!」


 と、クボちゃんも剣を構える。

 両者、しばし睨み合いを続ける……。

 道を極めし者同士、何かを感じとっているのだろう。勝負は一瞬で決まる。


「シノちゃん、ここはわたしに任せて、馬車に乗せられた子どもたちを……」

「うん」


 そういってボクは警備兵のいる馬車の方に近づこうとした。

「そうはいくか!」


 仮面の剣士が剣を振り上げ、ボクが馬車の方へ行くのを阻止しようする。

「ファイヤーボール!」


 ボクは魔法少女にはならずに、魔法使いのままの姿で攻撃魔法で牽制。攻撃は当たらなかったものの、ひるむ仮面の剣士――


「いやぁぁぁぁぁっ!」


 その一瞬を見逃さなかったクボちゃんが斬りかかった。

 それを仮面の剣士は、まるでダンスでもしているかのように華麗に回転しながらかわした。


「ぐぬぬ……」


 (にら)むクボちゃん。


 そうこうしているうちに空間転移術式の準備をすっかり終わらせた警備兵の男。

 今まさに転移を発動させようとしてた。

 周囲の空気が張り詰めている。


「ヴゥン」


 一瞬で馬車と警備兵は、光の粒子を残して消え去った。


「あれ? 仮面の剣士……置いてかれた?」

 クボちゃんがきょとんとしている。

「えっ……? まさか?」


 すると仮面の剣士は、高らかに笑った。


「はっはっは。あいつはいつもせっかちだからなあ。しかも自分だけが助かればそれでよしというゲス野郎だ。なあに、ここで私がお前達を片付ければいいだけの事。その後でゆっくり帝都まで帰還するまでよ」


「なにおう!? このまま素直に片付けられちゃう私だとでも? いーや、やられるのはあんたよ」

「なんだと?」


「どうもその仮面が気に食わない。気取っちゃってさあ。それにあんたのその髪、背格好。なんだか日本にいたときに見たことがあるような……」


「日本だぁ? 何を言っているんだ。私は帝国では名を馳せた剣士だぞ?」


 空間転移で逃げた警備兵の手際の良さに、ただ呆然としていたボクだったが、気がつくとクボちゃんと仮面の剣士が激しく剣を振り回していた。


「キンッ、キンッ!」


 攻撃こそが最大の防御と言わんばかりの、両者激しい切りつけ合い。だがほんの一瞬、剣で受け止めた衝撃でクボちゃんはバランスを崩し地面に倒れ込んだ。


 仮面の剣士は、倒れたクボちゃんの首元に剣先を突きつけ、今まさにとどめを刺そうとしている。


 いけない。クボちゃんがやられてしまう! そう思ったボクは、魔法使いの攻撃魔法が咄嗟に思いだせなかったので、魔法少女になることにした――


「変身っ!」


 声に出さずとも変身は、ボクの「変身したい」「クボちゃんを助けたい」と強く願うその気持ちで発動するのだ。その時間、わずかゼロコンマ五秒。


(――「ああっ、魔法少女シノちゃん……私はもう……むりぃ……」)


 クボちゃんの嘆きの感情がボクの心に語りかけてくる。助けなきゃ。


「な、なんだそのおかしな格好は? まほう……少女だと? いや、ツノがあるし。そのケバケバしい格好はサキュバスじゃないのか?」



          ―― つづく

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