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第5話 開戦! 疾風騎士団との死闘サッカー!

 試合当日――

 辺境中学サッカー部の面々は、荒野の特設スタジアムに立っていた。


 観客席は魔道士たちの飛行魔法で空中に作られ、数百人の村人や貴族が見守っている。

 その視線の先には、鋼鉄の鎧を輝かせた騎馬兵団『疾風騎士団』が整然と列を組んでいた。


 馬の吐息が白い霧のように宙を漂い、地面を蹄が鳴らすたびに大地が震える。


 (速いだけじゃない……突撃力と重さが桁違いだ……)


 健斗は汗を握る掌をギュッと握りしめた。


 「ビビってんのか、健斗?」


 隣からトマトッツが声をかける。

 杖の先から、チリチリと青白い魔力が漏れている。


 「ビビってねぇ……ただ、興奮してんだ。」


 ニヤリと笑い合う二人。


 対面に立つエルヴァは、槍を肩に担ぎ、澄んだ目で健斗を射抜いている。


 審判役の僧侶が、魔法のゴングを鳴らす。


 「――試合、開始ッ!!」


 突如として疾風が吹いた。


 ドオオオオオッ!!


 疾風騎士団が一斉に突撃!

 轟音と共に、馬の群れがフィールドを切り裂く。

 先頭のエルヴァがボールを巧みに操り、その背後に護衛の騎馬兵が続く陣形。


 「健斗! 左へ!」


 「わかってるッ!」


 盗賊スキル《跳躍》で馬上に飛び乗る健斗。

 騎士の肩を足場にして、エルヴァのボールをスライディングで奪いに行く――


 「甘いッ!!」


 エルヴァの馬が身体を傾け、真横に跳んだ。

 人馬一体の軌道修正――まるで意思を持つ生き物のようだ。


 「くそっ、マジで人馬一体かよ……!」


 地面に着地した健斗を狙って、後方の騎馬兵が槍のような長いスティックでボールを運ぶ。


 「《ウィンドブレイク》!」


 トマトッツの杖が唸り、突風が逆流する。

 馬の脚が一瞬鈍り、ボールが転がる。


 「ナイスだ、トマトッツ!!」


 健斗が地を蹴り、ボールを奪い返す!


 騎馬兵たちの包囲網をすり抜け、フィールド中央を疾走する健斗――

 盗賊の脚力と機動回避で、馬の突進を交わす!


 「行けッ、健斗――!」


 観客席からは歓声と悲鳴が入り混じる。


 ――しかし次の瞬間、


 「させるかァッ!!」


 エルヴァが馬を急停止させ、その勢いを殺さず馬上から健斗に飛びかかった。


 金属音、そして土煙。


 「ぐっ……!」


 体勢を崩した健斗は尻もちをつき、ボールが転がる。


 エルヴァは着地した瞬間、片膝をつきながら獣のように笑った。


 「どうした健斗! お前のスピードはそんなものか!」


 健斗は口の端を拭い、立ち上がる。


 「こっからが本番だろ……!」


 後方から、トマトッツの魔力が再び高まる。


 「一度、全部破壊してみようか。」


 その声と同時に、地面から魔法陣がいくつも浮かび上がる。


 騎馬兵 VS 魔法使い & 盗賊――

 異世界最速と最強の機動力を懸けた、血みどろのサッカーがさらに激化する!


つづく


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