第4話 迫り来る騎馬兵部隊! 疾風のサッカー襲来!
放課後のサッカーグラウンド。
ローナルドが自作した障害物コースで、健斗とトマトッツは汗だくになって練習していた。
「健斗、次は右だ! 突風を送る!」
「任せろっ!」
風の魔法で作った即席のゴールを、盗賊スキルで突破する健斗。
完全に二人の呼吸はひとつになっていた。
だがその時――
遠くから轟音が響いた。
ズドン! ズドン! ズドン!
土煙を上げて、校門を突き破るように十数騎の馬が現れた。
先頭に立つのは、獅子の紋章をあしらった甲冑を纏う騎士だ。
「な、なんだあれ……」
慌てて逃げ出す部員たちを横目に、健斗とトマトッツは目を細めた。
馬にまたがったままグラウンドに並ぶ騎士たち。
鎧の下から覗く鋭い目が、健斗を捕らえて離さない。
「おい、お前ら……」
健斗が一歩前に出ようとした瞬間――
ズバァッ!! と風を切って、一人の騎士が馬から飛び降りた。
その男は重厚な鎧を纏っているにも関わらず、砂埃を立てずに着地すると、悠然と面を上げる。
「赤沢健斗だな?」
低く、獣のような声。
金色の髪と深紅のマントが夕日に照らされている。
「俺はエルヴァ・ローディア。騎馬兵部隊『疾風騎士団』の主将だ。」
睨み合う健斗とエルヴァ。
背後の騎馬兵たちは馬上から睨みを利かせ、地面を蹄で掻いている。
「お前らと次の公式戦で当たることになった。挨拶だ。」
「挨拶……? このやり方がか?」
トマトッツが一歩前に出て杖を構える。
エルヴァは不敵に口角を上げると、鼻で笑った。
「サッカーは戦争だと言ったのはお前らの王だろうが。」
そう言うと、エルヴァは手を上げた。
騎馬兵たちは一斉に蹄を鳴らし、グラウンドの端から端まで駆け抜ける。
凄まじい機動力。
馬の速さを活かしたドリブルと突撃――まさに戦場の騎馬戦術そのものだ。
健斗の背筋に冷たい汗が伝う。
(速ぇ……俺の盗賊スキルでさえ、止められるか……!?)
エルヴァは鋭い瞳で健斗を見据え、宣言する。
「次の試合、お前の速さは俺たちには通じない。『疾風』の名に恥じぬことを証明してやる。」
エルヴァが馬に飛び乗り、騎馬兵団が一斉に方向転換して去っていく。
砂煙だけが、しばし空に残った。
残された健斗とトマトッツは、顔を見合わせる。
「なぁ……どうするよ、これ。」
「決まってる。」
トマトッツは杖を肩に担ぎ、挑発的に笑った。
「馬を止める魔法と、馬より速い盗賊――最強のコンビだろ?」
健斗も自然と笑い返した。
「だな。疾風なら、俺たちは雷と影だ!」
辺境中学サッカー部 VS 疾風騎士団
前代未聞の戦いが、いま幕を開けようとしていた――!