第3話 盗賊と魔法使い、異世界最速の連携!
昼休みの校庭――
砂煙が舞うグラウンドに、二つの影が駆けていた。
「もっと速く! トマトッツ、そこだ!」
「分かってる! 風よ、俺の脚を運べ――《ウィンドブースト》!」
トマトッツの足元を風が巻き、彼はまるで地面を滑るように横へと流れる。
健斗が奪ったボールを、目にも止まらぬスピードで受け取った。
「はっ!」
トマトッツが杖でボールを弾く。
普通なら反則だが、この世界では魔法を活かしたプレーが合法だ。
弾かれたボールは弧を描いて健斗の頭上へ――
「ナイス! 受けるぞ!」
盗賊スキル《跳躍》を発動。
健斗はあり得ない高さまでジャンプし、空中でボールをトラップ。
そのまま後方へヒールパス!
「面白い! もう一度来い!」
トマトッツが杖を突き立てると、魔法陣が地面に広がり、即席の土壁を作る。
敵ディフェンス役の練習だ。
「ここを抜けてみせろ、健斗!」
「言われなくても!」
土壁を両足で蹴って、角度を変えながらジグザグに突破する健斗。
トマトッツは魔法でそれをサポートし、障害物を作っては破壊する。
周囲の部員たちは、練習を止めてその異様な光景を見ていた。
「なんだあれ……」
「盗賊と魔法使いが……同時に動いてる……」
「相性最悪のはずだろ?」
だが、最悪どころか――息が合っていた。
健斗が壁を蹴って抜けるタイミング、トマトッツがそこへ魔法の加速風を送る。
お互いのスキルが完璧に噛み合い、あり得ない突破力を生んでいた。
最後の土壁をすり抜け、ゴール前に飛び出した健斗。
後方からトマトッツが叫ぶ。
「行け! シュートだ、健斗!」
「おおおおおっ!!」
跳ねる心臓、燃える肺、爆発する脚――
全てを込めた渾身のシュートが、目の前のネットを切り裂いた。
ズドンッ!
乾いた音が辺境の空に響いた。
静寂。
そして、練習を見ていた部員たちから歓声が上がった。
「すっげぇ……!」
「この二人、やべぇ……!」
トマトッツがゆっくりと健斗の隣に立つ。
「どうだ、面白いだろ?」
汗だくで息を切らせながら、健斗も笑った。
「お前が相棒で、ちょっとだけ良かったと思ってる。」
トマトッツも口元だけ笑って、杖を肩に担ぐ。
「ちょっとじゃないだろ? 言えよ、最高だって。」
「……最高だ!」
二人の笑い声が、荒れたグラウンドに響き渡った。
だが――
そんな二人の姿を、校舎の影から睨みつける人物がいた。
血のように赤いマントを翻し、不気味に嗤う新たな影。
異世界サッカーは、また新たな嵐を呼ぼうとしていた――。
つづく