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第2話 傲慢魔法使い、まさかの転校生!

試合が終わった後のフィールドには、血の匂いと焦げた土の香りだけが残っていた。

 壊れたゴールネットの前で、赤沢健斗は膝に手をついて息を整えている。


 (勝ったわけじゃない……ただの一点。でも、あのトマトッツから取れた。)


 まだ心臓が止まりそうなほど高鳴っている。


 「やっと見つけた……。」


 不意に、背後から涼やかな声がした。


 振り返ると、そこに立っていたのは――蒼い瞳の魔法使い、トマトッツ・フェルガード。

 試合の時とは違う、学生用のローブを羽織り、肩に小さな魔法精霊が眠っている。


 「お前……何でここに?」


 「お前のところに来た。」


 健斗は意味が分からず、ぽかんと口を開ける。


 「俺の学校を辞めて、今日からお前の学校に編入する。」


 あまりに当然のように言うので、耳を疑った。


 「はぁぁ!? お前、何言って――」


 トマトッツはかがんで、健斗の目を真っすぐ見た。

 その瞳には、試合中の高慢さではなく、どこか楽しそうな輝きがあった。


 「お前をもっと知りたい。お前と一緒にサッカーをする。それが俺の結論だ。」


 ずっと孤立していた健斗の心に、何か熱いものが込み上げる。


 「そんな……お前、あんな強いチームにいたんだろ? わざわざこんな辺境の――」


 「関係ない。面白いのはお前だ。」


 ぽん、と健斗の胸を指で突く。


 「お前といると、退屈しない。」


 そう言って、トマトッツは口の端を上げて笑った。


 (こいつ……ほんとに傲慢だ……!)


 だが、その笑顔を見た瞬間――心の奥にしまっていた何かが、少しだけ溶けていくのを感じた。


 ――翌日。


 「本日より、我が校に編入してくる生徒を紹介する!」


 教室に入ってきた教師の後ろには、当然のようにトマトッツが立っていた。


 「トマトッツ・フェルガードだ。お前ら、仲良くしろよ?」


 教室が一瞬静まり返り、すぐにざわめきに変わる。


 (嘘だろ……本当に来やがった……!)


 トマトッツは、教室の中をまっすぐに見渡し、健斗の隣の空席に座った。


 「これでいいだろ? 健斗。」


 満足げに笑うその顔は、どこまでも自由で、どこまでも自信に満ちていた。


 こうして、最強の魔法使いが仲間になった――

 この日、辺境中学サッカー部の運命が、再び大きく動き始めた。


つづく


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