第11話 甲獣狼を討て! 勇者の証、降臨
――グオオオオォォォォッ!!!
甲獣狼の咆哮が森を揺るがした。
巨体に雷撃を浴びせても、分厚い甲殻が熱を弾く。
フィリスの矢も、硬い装甲には深く刺さらない。
「クソッ……!」
トマトッツが杖を振り回す。
「健斗! あいつの首元だけは柔らかい! そこを狙え!」
「わかってる……!」
だが、首を守るように巨体を丸め、前脚の甲殻を盾にする甲獣狼――
盗賊の技では、あの盾を越えられない。
だが、健斗の脳裏に蘇るのは――あの重騎士団の壁を砕いた一瞬の閃光。
(速さだけじゃダメだ……突破するには――《貫通》だ!)
手にするのは森の枝を削っただけの簡素な短剣。
(これじゃ足りない……)
ふと、脇で矢を番えていたフィリスが、短剣を投げて寄越した。
「使え。あんたの速さなら、貫ける。」
黒銀に鈍く光る、影縫いの短剣。
「……借りる!」
健斗は短剣を逆手に握り直した。
「トマトッツ! もう一回……雷撃加速を頼む!」
「またかよ……! オーバーロードするぞ、身体が!!」
「構わねえ!!」
トマトッツが吠えた。
「馬鹿野郎ォォォ!!」
だが、杖が雷を紡ぐ。
――バチバチバチバチ!!
健斗の全身を稲妻が走り、血が煮えたぎる。
「いっけえええええええええッッ!!」
森を裂く光――
健斗が甲獣狼の前脚を跳び越え、鎧の隙間を見極めた。
――ドスッ!!
影縫いの短剣が、甲獣狼の首元を一直線に貫通した。
グググッ……!
甲獣狼の巨体が揺れ、咆哮を上げたまま地面に崩れ落ちる。
――勝った。
深い森に、三人だけの呼吸が残った。
勇者の石碑へ――
甲獣狼を討伐した証として、森の魔獣たちは健斗たちに牙を剥かなくなった。
フィリスの案内で辿り着いた森の奥――
そこに、苔むした古の石碑が佇んでいた。
石碑にはかすかに古代文字が刻まれている。
『勇者は己を超える者なり』
「……これが、勇者の石碑……。」
トマトッツが感嘆の声を漏らした。
健斗は震える手で石碑に触れた。
――ズズズ……!
石碑がわずかに光り、健斗の胸に暖かい何かが流れ込む。
《勇者の証》
――それは、勇者としての第一歩。
職業を超えて、無限の成長を許す、転生者だけが得られる特別な資格。
「これが……勇者……!」
フィリスが肩をすくめ、笑う。
「まだ卵さ。でも、少なくともアタシは、あんたを信じてもいいって思った。」
健斗は仲間二人に向き直った。
「行こう。俺は絶対に――この世界の最強の勇者になってやる!」
決意の声が、呪縛の森に木霊した。
つづく




