第10話 勇者の卵、最初の仲間と魔獣の森へ!
王都を旅立った健斗とトマトッツ。
二人が最初に向かったのは、王国北部に広がる《呪縛の魔獣の森》だった。
森の奥深くには、かつて歴代の勇者が修行を積んだという《勇者の石碑》が隠されている――
そうローナルドに教わったのだ。
「そこに辿り着き、生きて帰ってこれた奴だけが、本当に勇者を目指す資格を得る。」
ローナルドの言葉が、健斗の脳裏に焼き付いていた。
「……っし。気合い入ってんじゃねーか。」
隣のトマトッツは相変わらずだが、その瞳だけは真剣だった。
だが、森の入り口で待っていたのは、思わぬ人物だった。
「……あんたら、噂の転生者と大魔法使いだろ?」
木陰から姿を現したのは、短い銀髪を揺らす小柄な少女。
腰には二本の短剣、背中には黒革の矢筒――鋭い眼光が獣のように光る。
「誰だ、お前……?」
健斗が問うと、少女は鼻で笑った。
「アタシは《影縫いのフィリス》。この森を抜けるつもりなら、アタシを仲間にするしかない。」
トマトッツが眉をひそめる。
「仲間だァ? 何様だテメェ。」
フィリスは短剣を地面に突き立て、健斗を睨んだ。
「森の魔獣はお前らみたいな派手な奴にゃ向かない。影を裂き、息を殺す技がなけりゃ死ぬだけさ。」
健斗はしばし黙り込むと、スッと手を差し出した。
「……なら、頼む。俺は勇者になる。仲間が必要なんだ。」
フィリスの鋭い目が、少しだけ柔らかく笑った。
「いい目してるじゃん、転生者。……ついて来な。」
魔獣の森、試される勇者の卵
深い樹海、絡みつく瘴気。
無数の目が、木々の隙間から健斗たちを睨んでいた。
「チッ……おい転生者! 前だけ見てっと背後を食われるぞ!」
フィリスが小声で囁く。
(盗賊の頃より研ぎ澄まされた感覚……!)
健斗はわずかに息を整えた。
――ズズズ……
森の奥から現れたのは、全身を硬い甲殻に覆った巨大な狼型魔獣《甲獣狼》だった。
「こんなの、魔法障壁持ちの重騎士より厄介だぞ……!」
トマトッツが冷や汗を流す。
だが、健斗は自分の心が不思議と静かなことに気づいていた。
(これを越える……これを越えなきゃ、勇者になんてなれない……!)
剣も魔法もまだ未熟――
だが、足がある。心が折れてない。
「行くぞ……!」
健斗の足が地を蹴った。
フィリスが矢を放ち、トマトッツの雷が轟き、健斗が牙の群れを切り裂く。
勇者の旅路――
最初の仲間と、最初の試練が今、始まった!
つづく




