第9話 敗北と限界、そして旅立ち
雷撃と影の新必殺技で、一度は重騎士団の壁を破った健斗とトマトッツ。
だが、試合の決着はまだ終わっていなかった。
再び整った鉄壁の要塞――
重騎士団はどれだけ砕かれようと、どれだけ吹き飛ばされようと、立ち上がり、再び壁を築く。
「くっ……!」
何度も、何度も挑む健斗。
しかし――体がついてこない。
雷撃加速による筋肉への負担、盗賊の体躯では支えきれない膝と足首の限界。
ついには、スライディングの着地で膝が音を立てた。
「健斗ッ!!」
トマトッツの叫びが虚空に溶ける。
鉄壁のカウンター――
重騎士団キャプテン・バルドの全体重を乗せたタックルが、健斗を弾き飛ばした。
――ドゴォッ!!
砂煙の向こう、フィールドに倒れ伏す健斗。
無理矢理蘇生を試みる僧侶の回復魔法も、痛みだけが蘇る。
(……動けない……)
どれだけ速く走れても――
どれだけ雷で加速しても――
体が、限界を超えられない。
盗賊の身体能力では、重騎士団の圧倒的防御力を超えられない。
ピッ――。
試合終了の笛が鳴る。
重騎士団の勝利だった。
トマトッツが駆け寄り、血の滲む健斗の手を握り締める。
「お前……本気で死ぬ気か……!?」
震える声が痛々しい。
健斗は、霞む視界の中で笑った。
「俺は……まだ……勇者になるって決めたんだ……。」
トマトッツが眉をひそめた。
「勇者……?」
「盗賊じゃ……速さだけじゃ……限界がある……。全部越える……最強の職業……。」
血を吐く健斗の瞳に、消えない光が宿っていた。
「勇者になって……絶対に……負けねぇ……。」
そして――
試合後、健斗は王国中学校サッカー部を自ら退部した。
満身創痍の体を引きずり、ローナルドのもとを訪れた。
「俺に……勇者への道を教えてくれ。」
ローナルドは静かに笑った。
「いいだろう。勇者は職業じゃない――己で選び、作り出すものだ。」
その言葉を胸に、健斗は荷物を背負い、王国を旅立つ。
隣には杖を肩に担ぐトマトッツ。
「ま、仕方ねぇ。面白いもん見せてもらったし、最後まで付き合ってやるよ。」
二人の影が、朝焼けの街道を真っ直ぐに伸びていく。
盗賊の限界を越え、全てを超える者――
赤沢健斗の勇者への旅が、今、始まった――!
つづく




