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衝撃は突然に

第十四話 衝撃は突然に

「ヴァイヤン・シリルの勇者の技を封印した」

・・・・・・は?

 俺は一瞬、思考が止まった。そしてすぐに思考が動き出す。

・・・・・・え?封印された?全くそんな感覚は・・・・・・。いや、なにか力が抜けたのはそのためか?そもそも、ラファール王はなぜ勇者の技を封印したんだ?

「お父様!?何故ですか!?」

「・・・・・・ヴァイヤン・シリルの勇者の力はあまりにも強すぎる。もしかすると、自分の強すぎる力故に人を傷つけ、自分を追い詰めてしまうかもしれない・・・・・・。私はそのようなことは避けたいのだ」

・・・・・・ふぅん、なるほどね。

 大体は理解した。周りのみんなも感心している。しかし、俺は今もなお地面に這いつくばっているのだ。少しはこちらのリスクも考えてくれないだろうか。

・・・・・・てか、封印された力はどうなるんだ?

「安心しろ。必要な時に渡してやる」

 国王が俺の心を見透かしたように言った。え、怖。

・・・・・・良かった。

 俺は後ろを一瞬向いて、ロワ・ラファールに向かって一瞬で出現させた勇者の剣で「ゴッド・レイ」と言いながら斬りかかった。勇者の技を封印したというのは、どうやら本当のようで、技が使えない。しかし、斬撃自体は掠ったようで、不意打ちに対応できなかったロワ・ラファールは後ろによろめいた。俺は後ろに倒れるのを見逃さずに「メタリュルジ」で手が抜けないくらいの半分の輪っかを四つ作り、ロワ・ラファールの手足に向かって地面に打ち付ける。すると、俺のイメージ通りになった。

「くっ・・・・・・何をするのだ、ヴァイヤン・シリル!?」

「何してんの、クロ!?」

・・・・・・マジか。

 どうやら気付いていない人が数名いたようだ。さっき確認したら、気づいているのが実子のレフリクとリュヌハート先生ぐらいだったな。

「・・・・・・お前誰だよ」

 俺はわかりやすいように単刀直入に言った。こいつは、偽物のロワ・ラファールだ。

・・・・・・そもそも、国王がこんなことをすると思うか?

 何のための国王だ、国民の自由を保護するための国王じゃないのか、と思ってしまう。実際、俺は最初から偽物だと思ってたがな。国民に友好的とはいえ、クラス・エクセスラントに気軽に来れるような人じゃないだろ。あと、国王は国民の名前を絶対にフルネームでは呼ばない!

「え!?その人偽物なの!?」

 俺たち三人以外の全員が驚く。

・・・・・・逆に何で分からないかな。

「・・・・・・どこでバレたんだろ」

「!?」

 急にラファール国王の声ではなくなった。やはり、偽物ということで間違いないらしい。

・・・・・・偽物、ということは変装の魔法か?

「質問に答えろ。お前は誰だ」

「えー。言ってもいいと思うけど、闇の女神様に怒られちゃうなー」

・・・・・・闇の女神だと!?

 ここに来て最大の敵の名前が出てきた。もしかすると、こいつが光の神が言っていた闇の女神の手先なのではないだろうか。

「お前が闇の女神の手先か!?」

「うん、そうだよ」

 次の瞬間、一瞬でロワ・ラファールの姿から、黄色い髪と瞳の青年の姿になった。

「僕こそが、闇の女神の手先、トランフム・トンピー。薄々感づいているだろうけど、『ディギズモン』っていう変装の魔法使いだ。一度見たことがある相手なら何にでもなれる」

 その男はドヤ顔になりながら答えた。それが一体何を意味しているのか俺はすぐに分かった。

「もしかしてお前、俺たちにも変装できるのか?」

「そういうこと。君たちのことも今見たからね」

・・・・・・なるほど。つまり、答えは・・・・・・。

「『イドロジェ』!」

 俺はトンピーに向かって攻撃を放った。しかし、トンピーはそれにすぐ反応する。

「『ディギズモン』!」

 トンピーの体に当たる瞬間・・・・・・厳密には当たる少し前に俺が放った攻撃が跳ね返ってきた。俺との距離はほぼゼロ距離に等しいので、跳ね返ってきた高威力の水は俺の体を貫通する。

「ぐっ・・・・・・!」

 俺は後ろに倒れ込む。すぐにリーナが俺の方に駆け寄ってくる。

「クロ!?大丈夫!?」

「あぁ・・・・・・大丈夫・・・・・・だ」

「大丈夫じゃ無いでしょ!?」

・・・・・・確かにな。

 こんな怪我をしたのはいつぶりだろうか。魔王軍の戦いでもこんな怪我をしたことはない。ってか、めっちゃ痛い。ぐふっ。

「よく見ると、レフリク君に変身してるね」

・・・・・・そうか、「反射」の魔法か。

 レフリクの魔法はまだよく分からないが、恐らく反射する威力を好きに変えられるのだと思う。確実に自分が放った威力よりも強い。俺は人の体が貫通する強さで撃っていない。

「どうだ、びっくりしたか?」

 少しふざけ気味でトンピーが俺に言う。

「俺は人を見た時点でその人の魔法がわかるんだ。すごいだろ?」

・・・・・・へぇ。すごいすごい。

 何かコイツムカつくな。いや、待て。これが狙いかもしれない。冷静になろう、冷静に。

「『エクスイドロ』!」

「『ブリル』!」

 後方からフランジェとミジックが飛び出してきた。二人は攻撃を放ったが、結局跳ね返されてしまう。しかし、こちらには本家がいる。その跳ね返された攻撃を更にレフリクが透明な板を二人の前に出現させ、反射した。この繰り返しだ。

・・・・・・すげぇ。痛ぇ。

 すごい!二人共!というよりも、やばい!めっちゃ痛い!っていうのが勝つ。リーナが止血を試みているものの、今もドバドバ流血している。

「マリーちゃん!アレお願いできる?」

「・・・・・・」

 リーナの問いかけにフレー・マリーは黙り込む。まず、アレって何だ?

「マリーちゃん!!」

「・・・・・・しょうがないですわ。今回だけですからね!」

 やれやれ、というようにマリーがこちらに向かって歩き出す。そして、すぐに彼女は「フロレゾン」と唱え、手からまばゆい光を出した。

・・・・・・眩しッ!

 そして、その光によって地面から花が生えた。それに伴い、自分の痛みが治まっていく気がした。よく見てみると、自分の傷が治っていた。

「傷が・・・・・・」

「当然よ。わたくしの魔法は傷を癒やすこともできるのよ。・・・・・・あまり使いたくはなかったのだけれど」

・・・・・・便利だなぁ。

「ありがとう、マリー」

「・・・・・・当然ですわ」

・・・・・・照れてる。

 こういう事はあまりないのだろう。リーナも笑っている。

・・・・・・俺も加勢するか。

 そう思い、立ち上がった時に「どきなさい、貴方達」というリュヌハート先生の声が聞こえた。

「無闇に攻撃しても駄目です。お手本を見せます。・・・・・・『リュヌ』」

 すると、リュヌハート先生の背後から月が出現した。その月から三日月のような形の斬撃が出て、トンピーに跳ね返されることなく直撃する。

「ぐはっ・・・・・・。なぜ・・・・・・」

「私の魔法、反射などに引っかからないんですよね〜」

・・・・・・なんで?

 何でもかんでも反射できると思っていたため、驚いた。さすが先生、生徒の魔法をよく知っている。

「くっそ、こうなったら・・・・・・」

「待って」

 どこからか、聞いたことのない女性の声が聞こえた。次の瞬間、何もないところからその声の主だと思われる人が現れた。

「・・・・・・ディビャシーちゃん。助けに来てくれたの?」

「はぁ・・・・・・。帰るよ」

・・・・・・仲間か!?

「くっ、『イミテ』!」

「早くやっちゃってください!」

「はいはい。・・・・・・『ティリポース』」

 ディビャシーと呼ばれた女性がそう言うと、途端に彼らの姿は見えなくなった。そして、俺の叫びはあっけなく消えた。


「大丈夫かね!?」

「お父様!」

・・・・・・え?

 闇の女神の手先が去った五分後くらいに、本物のラファール国王が来た。

・・・・・・たまたまか。今回の事案があったからだよな。

 と、思ったものの、リーナ達によればよくここに来るらしい。そのため、偽物だとわかんなかったそうだ。

・・・・・・でも、明らかにおかしかったよね。

 まぁ、それは置いといて。俺達は今回のことをラファール国王に全て話した。少しは聞いていたが、全部は知らなかったようで、真剣になって聞いてくれた。

「ほぅ、そのようなことが・・・・・・。明日、安全の為に調査を行おう。リュミエールも明日は休校だ。自主練はしても良い」

 明日一日、国が色々調査をするらしい。危険が及ぶかもしれないので、子どもたちが多いリュミエールは明日休校になるらしい。

・・・・・・学校一日目なのに。

 俺は不満だったが、皆は納得しているようだったので、諦めた。仕方がない。明日はゆっくりしよう。


 リーナは国王から話があるらしいので、俺は一人で寮に帰ってきた。帰ってくるなり、後ろから「おい」という声が聞こえた。

「ミネット・・・・・・。お前居たよな?」

「居たけど・・・・・・」

・・・・・・留守番って言ったのにな。

「まぁ、いいや。ってか、重要なことが分かった」

「何だね?」

 ミネットが興味深そうに聞いてくる。それに応えられるように俺は話した。

「実は、闇の女神の手先の魔法をコピーすることができないんだ」

「何だって!?」

・・・・・・やはり、ミネットも知らなかったか。

 説明しよう。俺はアルマジーニと戦った時に、「この魔法コピーできたら強いな」と思っていたので、コピーしようとしたところ、何も反応がなかったのだ。いや、正確には、「コピーできません」という声が聞こえた。そう、全く使える気配がなかったのだ。たまたまなのかと思った。しかし、今日トンピーとディビャシーの魔法をコピーしようとしたところ、同じ反応がおきた。そして、アルマジーニと今日の二人の共通点は、同じ魔力を感じる、つまり闇の女神に操られているということだ。

・・・・・・つまり、闇の女神及び闇の女神に操られている人や魔族の魔法はコピーできないということだ。

「なるほど・・・・・・。確かに、神の魔法はコピーするのではなく、与えられるものだからなぁ・・・・・・」

「ん?なんて?」

「いや、なんでもない」

 ミネットが何やら言っていたが、小さい声だったし、早口だったため、全く聞こえなかった。何だろう。滅茶苦茶重要なことを言っていた気がする。

「というか、明日は休日だろ?」

「休日というか、休校・・・・・・」

「関係ない。どちらでもいいだろう」

 ミネットに言われてしまった。待て。嫌な予感が・・・・・・。

「あるものを買ってきてほしいんだ。もちろんこれは光の神命令だ。逆らったら・・・・・・」

「分かりました分かりました買ってきます買ってきます」

・・・・・・怖っ!

 ミネットの顔が怖い。これは本当に何をされるかわからない。

・・・・・・ちぇっ。明日は自主練をしたかったのに。

「さっきも言ったはずだ。君は十分強い。練習なんてしなくても余裕で強い。それぐらい魔法の才能がある」

・・・・・・さっきも思ったけど心の声を読まれるのは怖いな。

 まぁ、いいだろう。それよりも、気になることがある。

「で、一体何を買うんだ?」

「女性の服だ」

 俺の脳が固まった。

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