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魔族への因縁 2

第八話 魔族への因縁②

・・・・・・それにしても、厄介だな。

 状況を説明しよう。まず、フランリュー・フランジェと話していた所、突如、試験会場の天井が割れ、魔族が侵入してきた。そしてその魔族が、魔王の手下・・・・・・魔王軍二番手のヴァルタリオン・アルマジーニだったのだ。ちなみに、ヴァルタリオン・アルマジーニも、ブルンと同じで最後、人間側についた魔族だった。

・・・・・・魔族収容所に服役しているはずだが、なぜここにいる?

「貴様・・・・・・勇者シリルか?」

「そうだけど何?ビビってんの?」

 俺は懐かしい声に、しかし得体のしれない怪物に向かって挑発をした。すると、アルマジーニにめっちゃ睨まれた。

「・・・・・・なぜ貴様がここにいる!」

「こっちの台詞なんだが?お前、人間側についたんじゃ・・・・・・」

・・・・・・それだけが、解せない。

 ブルンやアルマジーニなど、人間側が強すぎて(特に俺)寝返った魔族も少なくは無い。ただ、こいつのように急に暴動を起こした魔族は前例がない。

「そんな訳ないだろう。逆に俺が魔王の傍系なのに魔族から裏切ることがおかしいと思わないのか?」

「・・・・・・魔王にトドメをさせたのはお前のおかげだと言っても過言ではないからな」

「それですら、魔王様の指示だがな」

 何と、アルマジーニは、魔王自身を倒すように、そしてその後に人間界を壊滅させるように魔王から指示があったのだそうだ。

・・・・・・じゃあ、ブルンは?

 俺の頭に不安がよぎった時、アルマジーニのイラついている声が聞こえてきた。

「くそっ!魔法使いの、しかもまだ卵の奴等を襲えば確実に・・・・・・確実に勝てると思っていたのに、聞いてないぞ勇者シリルがいるなんて!お前さえいなければ・・・・・・」

・・・・・・それって普通、戦った後に言わない?

 俺は後ろをチラッと見ながら、アルマジーニの愚痴を聞いていた。それを聞かなかったことにするように、俺は一度きつく目を閉じ、ため息を吐く。そしてすぐに目を開け口を開く。

「本当にそうか?案外俺以外の脅威もあるかもしれないな。・・・・・・フランジェ」

「『エクスイドロ』!」

「くっ!?」

 後ろにいた・・・・・・と言っても二十メートルは離れているフランジェに合図をし、攻撃をするように促した。攻撃は不意打ちのため、もちろん直撃。大きいアルマジーニの図体が倒れてゴォォォンという轟音が聞こえる。

「よく分かったな」

「・・・・・・勇者シリル様、本当に」

「分かった分かった。後でな。今は忙しいから」

 またもや俺は目で合図を送る。その先には起き上がったアルマジーニの姿があった。

「どうだ?お前が軽蔑視した卵は」

「・・・・・・全く効かぬが想像以上であった。しかし・・・・・・」

「だよな?物足りないよな?」

「え、ちょっ」

「『エペ・ド・ラ・デストラクション・デュ・ロワ・デ・アンフェール』」

 次の瞬間、俺の左側に差されていたメタリュルジ製の勇者の剣が稲妻と炎を帯び、それを確認してから俺は、剣を前に突き出す。

「なんだ?剣が伸びて・・・・・・?」

 フランジェが驚くのも無理はないだろう。なんにせよ、俺の究極の技、「冥王破滅剣」だ。最初から本気で行く。

・・・・・・そういう主義なもんで。

 そんなことを考えている間にも、剣は伸びる。伸びたところから太陽系の星々が現れる。土星、天王星、海王星が現れたところで、剣の伸びは止まる。

「アクティヴァ!」

 その言葉とともに俺は剣を後ろに振り、アルマジーニに向かって飛び上がった。え?どうせ当たらないだろって?大丈夫だ。俺がこの技を使用している時は、自分が「対象」として認識した相手の時間を止めることができるのだ。最強でしょ?

「いけ!」

 俺の攻撃は魔族の急所である頭に直撃した。直撃とともにドゴォォォンという鈍い音が響き渡る。そして、俺は地に足をつけた。

・・・・・・やれやれ。

 この最強の技には苦労するものだ。最強と言ってももちろん欠点はある。攻撃直後、目の前が砂煙に数十秒間包まれると言うことだ。完全に前が見えなくなるため、状況を把握するのが難しくなる。

・・・・・・まぁ、あの攻撃が直撃すれば跡形も残っていないだろうが。

 そんなことを考えて立ち尽くしていると、砂煙が薄くなってきて、アルマジーニの姿が確認できた。ん?姿が確認できた?嘘でしょ?

「ふぅ・・・・・・。今のは流石に痛かったぞ」

「待て待て待て。なぜ生きている?」

「・・・・・・?」

 アルマジーニは一度思考停止をしたようだが、それも束の間。大きな声で笑い出した。なぜ今のタイミングで笑うのかがわからなくて、気色悪くて、少し引いてしまう。

「・・・・・・何がおかしい?」

「フハハ。愚かだと思ってな。我の魔法に手も足も出ないとは・・・・・・」

「魔法・・・・・・?」

「そういえば言っていなかったな。我の魔法は『オブリヴィオン』だ。命や魂を操る」

・・・・・・命や魂だと!?強すぎないか!?

 とは思ったものの、こいつは一応魔王族傍系だ。それぐらいの強さが妥当だろう。

「・・・・・・で、その魔法がどう関係しているんだ?」

 俺は、あわよくば魔法を自分のものにできないかと質問した。アルマジーニは、質問の意図も知る由もなく、悦に入っているのかすんなりと教えてくれる。

「フハハ。聞いて驚くなよ?俺は自分の魂を操ることができる。つまり、死ぬのも生きるのも自由ということだ」

・・・・・・無理じゃないですか?強すぎだろ。

 道理で俺の冥王破滅剣が効かない訳だ。

・・・・・・どうすれば倒せるんだ!?

「フハハ。どのようにして倒すのか、さぞ困惑しているだろう。惨めだな、勇者シリル。・・・・・・まぁ、俺を倒す手段なんて魔族の中でも幹部レベルでなければ知らないだろう」

・・・・・・一応倒せるのね?

 倒せると分かり、俺は頭を高速回転させ、倒す方法を考える。魔族の弱点がダメなら・・・・・・。

「フハハ。何をしている勇者シリル!」

「ぐおっ!」

 目を離してる隙に、アルマジーニが攻撃を仕掛けてきた。俺はそれを間一髪で避ける。

「あ、いた!クロ。もう、めっちゃ探したんだけど⁉︎」

 長らく忘れていたリーナが、俺を見つけて近寄ってきた。

・・・・・・リーナならなんか勝てそう。

「グヌッ!貴様は、プラリネ・カンディードではないか⁉︎」

「あっ!お前は、ヴァルタリオス・アルマなんとか!」

・・・・・・何で知ってんだよ!

 どうやら、リーナが散歩しているときに、二人は遭遇し、死ななかったもののアルマジーニはギリギリまで追い詰められて撤退を余儀なくされた、という出来事が起きていたようだ。

・・・・・・ちゃんと名前覚えろよ!

 色々ツッコミたくなってしまうが、俺は頑張って抑えた。なんか、リーナとアルマジーニがバチバチしているので、邪魔するわけにはいかないからだ。

「なぜだ・・・・・・。なぜそんなに強い奴が多いのだ!?」

 アルマジーニの疑問に俺はドヤ顔で答える。

「知らん。お前の運が悪いだけじゃね?」

「なんだと!?」


・・・・・・どうしたものか。

 少し茶番を挟んでしまった。だが、そのお陰でおおよその勝ち筋は見えてきた。まず、リーナがたくさんの攻撃を畳み込み、隙を作る。そこであまり俺が繰り出せない必殺技を打つ!ただそれを繰り返す単純作業だ。しかし、ただ我武者羅に攻撃するわけではない。一回ずつ攻撃する箇所を変えたり、威力を変えてみたりするのだ。気が滅入るような作業だが、やるしかない。

「よし、リーナ。お前はたくさん攻撃を畳み込・・・・・・」

「させるか!『オブリヴィオン』!」

 俺がリーナに作戦を伝えようとしていると、アルマジーニが光線のような攻撃を放ってきた。それを俺とリーナは難なく避けたが、地面の当たった箇所は生い茂っている草が枯れてしまっている。

・・・・・・なんだよこれ!

「チッ。避けられたか」

「・・・・・・クロ。あの攻撃は危険よ。注意して」

「あの・・・・・・具体的に・・・・・・」

「あの光線は、当たった物体の生命エネルギーを奪うの。・・・・・・あいつは、人間やらこの星のエネルギーを吸い取って力をつけているの。恐らく、弱っていたけれど魔族収容所の魔族たちのエネルギーを吸収してきたんじゃないかな」

・・・・・・それってつまり・・・・・・。

 俺以外にも同じことを考えていた人が居たようだ。こちらに近づいてきて、リーナの声が聞こえただろうフランジェは青ざめた顔をしている。そう、ブルンのエネルギーも吸収されたかもしれないのだ。

・・・・・・くそ!俺はこいつらを会わせたかったのに!

「・・・・・・はぁ。くよくよしていてもダメ!まずクロがするべきなのは、アイツを倒すことでしょう?」

 俺の心を見透かしたのか、顔に出ていたのかわからないが、リーナは俺の考えていたことがわかったようだ。

・・・・・・そうだよな。まずは・・・・・・。

 俺はいつの間にか下がっていた顔を上げた。そして、アルマジーニをもう一度見る。

「ヴァルタリオン・アルマジーニ。絶対にお前を倒す!」

「フハハ。無駄なことを。お前らでは絶対に倒せまい。なんにせよ、我を倒せるのは魔族の魔法だけだからな。しかも、魔族が使う魔族の魔法だ。シリル、お前がコピーした魔法は使えまい」

・・・・・・なんだと⁉︎それじゃあ、勝ち目はないじゃないか。これは封印するしか・・・・・・。

 「封印」とは、勇者家に代々伝わる術であり、一度使用してしまうと自らの命を絶つことになる。「封印」と呼んでいるが、封印された対象は使用者とともに命は消える。たとえ、それが神だとしてもだ。別の言葉に置き換えれば、絶対に通用する「自爆」のようなものだ。

・・・・・・悪ぃなリーナ。いつも心配かけて。

 俺の覚悟が決まった次の瞬間、俺の敏感な耳が上空の「アズリーヌ」という言葉を拾った。そして、予想していたように上空に青い炎が出現する。その直後、アルマジーニの声が聞こえる。

「熱っ!・・・・・・貴様、なぜ生きている⁉︎殺したはずだろう?フランリュー・ブルン」

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