あとがき
『赤男-若手俳優連続殺人事件簿-』を最後まで
読んでいただきありがとうございます。
はじめまして、作者の燭間茉楼です。(ΦωΦ)
皆様、いかがだったでしょうか?
「かなり攻めすぎたな……」と
正直なところ、自分でも感じています。
書き終えて改めて読み返してみたら、
「なんだこの小説、怖すぎるだろ!」と、
我ながら引いてしまったほどです。
(まあ、自分で始めた物語なんですけどね……)
①テーマときっかけ
この作品を書き始めたきっかけは、実写化に対する、なんてことのない「独り言」のような愚痴からでした。
あらかじめお伝えしておきますが、2.5次元や実写化という文化自体を否定するつもりはありません。
『銀◯』や『る◯うに◯心』、『◯ールデン◯ムイ』のように、実写ならではの魅力が光る素晴らしい作品もたくさんあると思っています。
けれど、もし「好きか嫌いか」と問われたら、
正直に「嫌い」と答えてしまいます。
理由はいくつもありますが、一番は「推しキャラが、個人の商売道具として使われるのが嫌」かもしれません。もし、自分の推しキャラが、公式に許可を出した先で不祥事を起こされたり、イメージを損なう形で一生残る「デジタルタトゥー」になってしまったら……。
そう考えると、どうしても喜べないのです。
SNSで実写化がトレンド入りするたび、「なぜわざわざ舞台・実写化するんだろう?2次元だからこそ面白いのに…俺には理解し難い。」と、ずっと心の中でもやもやを抱えていました。
そんなある日、ふと一冊のギャンブル漫画に登場する 「赤男」という名が頭をよぎりました。他人の自由が許されず、自分の不自由を他人に味わせるその姿を見たとき、自分の中に哲学的な疑問が浮かんだのです。
「なぜ、俺は嫌いなんだ? 何の関係もないはずなのに。」この得体の知れない感情をダークサスペンスに昇華させたら、面白い物語になるのではないか。
そうして生まれたのが、
今回のテーマである『理由なき嫌悪』です。
ただ正直、執筆には迷いもありました。
「2.5次元俳優が惨殺される」というショッキングな内容は、ファンの方々の逆鱗に触れるのではないか、と。何度も「やめておこうか」と踏みとどまりました。
けれど、自分の中に溜まった毒をそのままにしておくより、いっそ物語として吐き出してしまおう。そう決意して、この作品を完成させました。
②キャラの設定
本作の登場人物について、主人公の「佐藤一」以外、名前やセリフで「あ、もしかしてあのキャラがモデル?」とピンときた方も多いのではないでしょうか。
実はこれには、二つの意図を込めています。
◯一つ目は、読者の皆さんに
イメージを膨らませてもらうためです。
例えば、「医者を目指して過酷な試験に挑む青年」や、 「荒々しくも仲間想いな鬼退治の剣士」を彷彿とさせるキャラクターなど、あえて既存のエッセンスを取り入れることで、皆さんの頭の中でより鮮明に物語を動かしたいと考えました。
◯二つ目は、「原作改変」に対する
ちょっとした皮肉です。
例えば、作中の「早乙女藍」と「加撰清音」は、あえてモデルとなったキャラクターとは性別を逆転させています。
かつて実写版の『カ○ジ』や『闇○ウシ○マくん』で、本来は男性であるはずのキャラクターが女性に変更されていた……なんてことがありましたよね。そんな「実写化あるある」への違和感を、キャラ設定そのもので表現してみたかったのです。
そんな「原作へのリスペクト」と「実写化への皮肉」が混ざり合ったキャラクターたちが、物語にどんな違和感を感じるかを伝えたかったからです。
③ 脳が起こす「バグ」と嫌悪感の正体
なぜ、これほどまでに実写化に違和感を抱いてしまうのか。自分なりに分析してみた結果、一つの仮説にたどり着きました。
それが、森政弘教授が提唱した「不気味の谷現象」が
関係しているのではないでしょうか。
特に日本で育った私たちは、幼い頃から膨大な数のアニメや漫画に触れてきました。その結果、二次元のキャラクターに対して、無意識のうちに「こうあるべき」という非常に高精度なイメージを脳に刻み込んでいます。
最近のメイク技術は本当に素晴らしく、一見するとキャラクターそのものです。頭では「クオリティが高い」と分かっていても、脳の深い部分にある無意識のイメージが「これは本物じゃない」と警告を発してしまう。
この理想と現実のわずかなズレこそが、脳のバグ、
つまり「嫌悪感」の正体ではないかと推測しています。
「割り切って見ればいい」と言われることもありますが、長年培われた感覚をアップデートするのは、そう簡単なことではありません。そんな現代特有の「脳のバグ」を、この物語に忍ばせてみました。
④メッセージ
◯出版・舞台・ドラマ・映画業界、
監督・脚本家の関係者の方々へ
冒頭でも申し上げた通り、実写化という文化そのものを否定するつもりはありません。しかし、原作者の想いを無視した独断での実写化や、安易な原作改変には、嫌悪感を禁じ得ません。
そもそも作品の主役は、どこまでいっても原作者です。二次・三次利用に関わる人々は、あくまでその世界を借りている立場に過ぎません。原作者に指図したり、作品を私物化したりする権利など、どこにもないはずです。
業界が無責任な改変を繰り返してきた結果、取り返しのつかない悲劇も起きてしまいました。現状の無責任さには憤りを感じています。
だからこそ、あえて逆手に取り、
『赤男-若手俳優連続殺人事件簿-』を執筆しました。
「実写化、やれるもんならやってみろ」
と、言わせていただきます。
◯若手俳優の皆さまへ
舞台や映画でキャラクターを演じるために日々過酷な稽古に励み、ストイックに自分を追い込むその姿勢には、心から敬意を表します。
努力の結果としてファンの方々にチヤホヤされるのは、当然の報酬ですし、決して悪いことではありません。だからこそ、これだけは忘れないでほしいのです。
「キャラクターは貰っているのではなく、あくまで
『貸してもらっている』に過ぎない」ということを。
俳優という仕事は、信頼があってこそ成り立つものです。もし自ら不祥事を起こしてしまったら、そのキャラクターを返そうと思っても、もう返すことはできません。不祥事の記憶はキャラクターのイメージを汚し、消えない「デジタルタトゥー」として一生残り続けてしまいます。
皆さんが背負っているのは、単なる「役」ではなく、原作者やファンが大切に育ててきた「命」です。日々の生活の中で、自分の行動が何をもたらすのか、善悪をしっかり考えて行動してください。
もし不祥事でキャラクターの顔に泥を塗るような
ことがあれば、俺は絶対に許さないです。
その覚悟と責任を持って、
板の上に立っていただきたい。
切にそう願っています。
◯読者の皆さまへ
ある有名な海賊漫画の主人公は、こう言いました。
「何が嫌いかより、何が好きかで自分を語れよ!」と。
本当にその通りだと思います。本来なら、嫌なことに執着するより、好きなことを全力で語っている方がずっとハッピーですよね。
けれど、現実はそう簡単ではありません。どうしても割り切れない思いや、心の奥底に溜まっていくモヤモヤは、誰にだってあるはずです。
だからこそ、この物語は「実写化はどうしても苦手だ」「原作への愛が強すぎて辛い」という方々の、心の捌け口のような存在になればいいなと思っています。
綺麗な言葉だけで自分を語るのに疲れたとき、この毒気たっぷりの物語を読んで、「自分だけじゃなかったんだ」と少しでもスッキリしていただけたなら、作者としてこれほど嬉しいことはありません。
⑤ 今後の予定(と、ちょっとした裏話)
実は今回の物語、初期構想では登場させる予定だった
「没キャラ」たちが何人かいます。
・切木 牧瀬
・風連 花
・水星 すみれ
・十須 愛斗
・皇 骸
彼らがどんな風にこのサスペンスに絡む予定だったのか……それはまた別の機会にお話しできればと思います。
さて、「続編は?」という声も聞こえてきそうですが(捜査打ち切り直後の物語など、構想自体は練れるのですが)、正直な本音を言わせてください。
小説を作るのって、こんなに大変だとは思いませんでした。今のところ、続編を書き上げる気力はすっかり使い果たしてしまいました。
(今はとにかく休ませてくれ……!)
ただ、もし皆さんの評判が良くて、私のやる気スイッチが奇跡的に再起動したら、ワンチャン……なんてこともあるかもしれません。期待値低めでお待ちいただければ幸いです。
ここまでお読みいただき、
本当にありがとうございました!
またどこかで……さらば!(ΦωΦ)ノシ
2026.3.13 燭間茉楼




