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赤男-若手俳優連続殺人事件簿-  作者: 燭間茉楼


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第22話 業火

 炎が倉庫全体を飲み込み、

 夜空に赤い火柱が立ち上っていた。


 崩落する鉄骨の音と爆発の余波が響き、

 熱風が顔を焼く。佐藤一は五虎を八車に預け、

 血まみれの顔で倉庫の入り口を振り返った。


 八車が五虎を抱え、部下に指示を飛ばす。


「五虎を車へ!救急を呼べ!」


 五虎は弱々しく(はじめ)を見上げ、掠れた声で言った。


(はじめ)……やめろ……行くな……」


 (はじめ)は首を振り、口の傷から(したた)る血を拭う。

 声がかすれる。


「俺が終わらせる」


 (はじめ)は拳銃を握り直し、炎の中へ再び飛び込んだ。

 熱気が肌を焦がし、煙で視界が白く霞む。


 崩れる天井の破片を避けながら、奥へ進む。

 口の傷が焼けるように痛み、血の味が喉に広がる。


 倉庫の中央では、

 白川拓実が滑()全一と対峙していた。


 白川の白髪が汗と血で張り付き、

 ナイフを握った手が震えている。


「……お前を絶対殺す!」


 白川が飛びかかる。


 滑()はナイフで受け止め、刃が交錯する。

 火花が散り、血が飛び散る。


 白川の腕に新たな傷が増え、

 滑()の肩から血が(したた)る。


「君の憎しみも、美しいね」


 滑()の声は穏やかだ。仮面は既に外れ、

 いつもの顧問の顔が炎に照らされる。


 白川は歯を食いしばり、ナイフを振り上げる。


 滑()は白川の刃をかわし、

 逆にナイフを突き出す。


 白川は体を捻り、刃を避けるが、

 胸をかすめて血が噴き出す。


 白川は痛みを無視し、

 滑()の腹を狙ってナイフを突き刺す。


 滑()は横にステップし、刃を弾く。

 金属音が響き、火花が飛び散る。


「憎しみは、君を輝かせる。でも……壊れた瞬間が、一番美しい」


 滑()は低く笑い、ナイフを回転させて

 白川の喉元を狙う。


 白川は後ろに飛び退き、

 息を荒げながら滑()を睨む。


「お前みたいな奴に、侮辱させるかぁぁぁ!」


 白川は再び飛びかかり、

 ナイフを連続で振り下ろす。


 滑()は冷静に受け止め、刃を交錯させる。

 火花が連続で散り、血が飛び散る。


 白川の腕、肩、胸に傷が増え、

 滑()の服も赤く染まる。


 (はじめ)が駆け寄り、拳銃を滑()に向ける。

 口の傷で声がかすれる。


「滑川……終わりだ」


 滑()はゆっくり(はじめ)を見た。笑みが深まる。


「佐藤君……君も、いい絵の具になると思ったのに」


 滑()はナイフを下ろし、

 胸を押さえる。息が荒い。


 内臓系の持病――心臓の弱さ――が、

 炎の熱と戦闘の負担で限界を迎えていた。


「ふふ……結局、身体が……先に壊れたか」


 滑()はポケットから小型の爆発装置を

 取り出す。赤いボタンを親指で押す。


「画は……自分で完成させるよ」


 (はじめ)が叫ぶ。


「よせ、やめろぉぉぉ!」


 爆発音が響く。滑()の体が炎に飲み込まれ、

 肉体が崩壊するように消滅した。


 爆風が(はじめ)と白川を吹き飛ばし、コンテナが倒れる。

 白川は地面に倒れ、意識を失った。

 血まみれの体が動かなくなる。


 場面は変わり、倉庫の奥、崩落を免れた一角。


 日神総一は赤い額縁を抱え、静かに立っていた。

 額縁の皮膚が炎の光に照らされ、不気味に輝く。


 口井藤馬――イドが銃を構えて現れる。


「日神……なぜ裏切った」


 日神は無表情で答える。


「計画の邪魔だからさ。実物は既に僕が持っている」


 イドの目が細まる。


「目的は何だ?」


 日神は静かに笑う。


「この世の頂点だよ。デザートニールと関係を持つことで、あらゆる組織への干渉が可能になる。乗っ取りの第一段階……これが、僕の計画の始まりだ。自爆ドローンの件も、僕が別組織に依頼した仕掛けの一つさ」


 イドは銃口を日神の胸に固定したまま、

 声を低くする。


「森谷を撃ったのも……お前の計画か」


 日神は肩を軽くすくめる。


「当然だよ。あいつはただの駒。使い終わった時点で不要。君も同じだ。公安の優秀な犬として、よく働いてくれた。でも、もう用済みだ」


 イドの指が引き金にかかる。


「心臓発作銃を君に撃たせた瞬間から、死へのカウントダウンが始まっていたとも知らずに」


 イドの表情が初めてわずかに歪む。


「まさか、お前……オレを……」


 日神は優雅に額縁を掲げ、

 炎の光に当てながら続ける。


「君の怒りも、美しいね。滑()の『画』に負けないくらい。でも、残念ながら、君はもう動けない。心臓が、止まるまであと……ほんの少しだ」


 イドは銃を握る手に力を込め、声を絞り出す。


「お前みたいな奴が……頂点に立てると思うのか?」


 日神は薄く笑う。


「思うよ。なぜなら、僕は汚れを知らない。完璧に、静かに、すべてを管理する。君たちのような感情の塊は、ただの障害物だ」


 イドの呼吸がわずかに乱れる。


「滑()の画を……お前が継ぐ気か」


 日神は額縁を優しく撫でる。


「滑()の画?興味ないね。滑()はただの道具だった。君も、森谷も、五虎も、佐藤も……すべて、僕の計画のための部品さ」


 日神は腕時計を見下ろす。


「10……9……8……」


 イドは静かに見つめる。表情を変えない。


「7……6……5……」


 日神はニヤけながら、時計を見続ける。


「4……3……2……」


「1……」

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