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赤男-若手俳優連続殺人事件簿-  作者: 燭間茉楼


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第21話 裏切り

 倉庫内は銃声と叫びで満ちていた。


 森谷茂の背中から血が噴き出し、

 彼はよろめいて階段の手すりに倒れかかる。


 日神総一は森谷を突き飛ばした。

 森谷の体は階段を転がり落ち、

 地面に叩きつけられる。


 背中の銃創は致命傷だった。

 血溜まりがゆっくり広がっていく。


 手良秀吉が叫ぶ。


「日神!何をする!」


 日神は無表情で銃を構え直す。


「君たちは、もう必要ない」


 (はじめ)は目を見開いた。


 滑()全一が、血の臭いの中で低く笑う。


「面白いね。画に新しい線が引かれた」


 白川拓実はポケットからナイフを取り出し、

 滑()に飛びかかる。


 滑()はそれを腕で受け止め、

 白川の刃が滑()の肉を裂いて鮮血が飛び散った。

 (しずく)が床に落ち、赤い点描を描く。


 (はじめ)は五虎を支えながら拳銃を構える。

 口の傷から血が(したた)り、声がかすれる。


「五虎さん……逃げよう」


 五虎は弱々しく頷いた。

 息が荒く、肩が震えている。


 倉庫は銃声と叫びで満たされ、

 混戦はさらに激しさを増す。

 弾丸がコンテナを穿ち、火花が飛び、影が乱れ舞う。


 外からサイレンの音が近づくが、

 まだ八車は到着していない。


 (はじめ)は歯を食いしばり、拳銃を握り直す。

 口の痛みが視界を歪ませるが、諦めなかった。


(まだ……終わらない)


 <首都高速湾岸線>


 覆面パトカーが夜道を疾走していた。

 八車鳴一が運転席に座り、

 部下たちが後部座席で銃をチェックしている。


「本部、こちら八車。横浜貿易倉庫へ急行中。被害者は蒼木五虎、容疑者は滑()全一および森谷茂。支援を要請」


 無線から応答が返る。


「了解。応援部隊を派遣中」


 八車はアクセルを踏み込み、速度を上げる。


 夜空を見上げた瞬間、

 複数の黒い影が浮かんでいるのに気づいた。


「なんだ、あれ……」


 黒い影の群れ――ドローンが、

 倉庫方向へ低空飛行で迫ってくる。

 八車はハンドルを強く握る。


 部下の一人が叫ぶ。


「例の自爆ドローンです!倉庫を吹き飛ばす気だ!」


 もう一人が焦った声で続ける。


「数えきれない……十機以上いるぞ!」


 八車は即座に判断する。


「ジャミングをかけろ!全力で!」


 部下が後部座席からジャミング装置を起動する。

 電子妨害波が広がり、ドローンの一部が制御を

 失って揺らぐ。だが、全てを防ぎきれない。


 数機がジャミングを突破し、

 次の瞬間――倉庫へ次々と突っ込んでいった。


「くそっ!間に合わねえ!」


 八車はアクセルを全開にし、倉庫へ急ぐ。

 メーターが振り切れ、車体が悲鳴を上げる。


 ――その時だった。


 夜空に爆発音が響き、炎が立ち上る。

 倉庫の一部が崩れ、火柱が上がった。


 衝撃波が空気を震わせる。


 倉庫内では爆発の衝撃が走る。

 コンテナが倒れ、火花が散った。

 天井の鉄骨が軋み、熱風が顔を焼く。


 (はじめ)は五虎を庇い、コンテナの影に身を隠す。

 崩落する破片がすぐ横を掠め、火の粉が舞う。


「爆発だ!」


 五虎が咳き込みながら叫ぶ。煙で声が掠れる。


(はじめ)……逃げろ!」


 滑()は炎の中で笑う。

 炎の揺らめきが仮面を赤く照らす。


「素晴らしい……昔、火事に巻き込まれた俳優を思い出すよ……忘れられないんだ、顔が醜くなった瞬間の喜びの感情が」


 白川は爆風に吹き飛ばされ、

 壁に叩きつけられる。


 体を起こし、血まみれの顔で滑()を睨む。


「お前……侮辱しているのか……」


 滑()は仮面の下で笑みを深める。


「侮辱?これは皮肉さ」


 手良とSPたちは爆風に巻き込まれ、重症を負う。

 手良は地面に倒れ、SPの一人が炎に飲み込まれる。

 手良は血を吐きながら(うめ)く。


「くそ……こんな……」


 炎が広がり、煙が充満する。視界が白く霞む。


 (はじめ)は五虎を支え、出口へ向かう。

 崩れる天井の破片を避けながら、熱に耐える。

 口の傷の鉄の味が喉に広がり、視界が赤く滲む。


「五虎さん、持ってくれ!もう少しだ!」


 外では八車の覆面パトカーが到着し、

 部下たちが降りる。


 ジャミング装置を再起動し、

 残りのドローンを落とそうとするが、

 倉庫はすでに炎に包まれていた。


 炎の中から、(はじめ)が五虎を支えて出てくる。

 口から血が流れ、顔が赤く染まっている。

 服が焦げ、髪が熱で縮れている。


「八車さん……!」


 八車は駆け寄り、五虎を受け取る。


「よく持ったな、(はじめ)!」


 だが、倉庫の奥から滑()の笑い声が響く。

 炎越しに、仮面の輪郭がぼんやり浮かぶ。


「まだ……画は終わらないよ」


 炎がさらに広がり、倉庫全体を飲み込む。

 夜空に火柱が立ち上り、横浜の闇を赤く染めた。


 (はじめ)は拳銃を握りしめ、炎を見つめる。

 口の傷が疼き、血が(したた)るが、目は燃えていた。


(滑川……お前の画を、俺が終わらせる)

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