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そうこうしているうちに飛行機がジョン・F・ケネディ国際空港に到着する。いよいよ入国審査だ。何を訊かれるかはわかっていたので予習済みだったものの、それでもあたふたしてしまった。指紋認証する際にやり方がわからず、手こずってしまったのだ。それを見ていた40代くらいの女性係員に呆れた顔ーーため息もついていたーーをされ、
「……もう、こうやってやるのよ!」
と私の手を掴んで指紋認証のやり方をレクチャーしてくれた。力も強かったので、日本でこれをすると「態度が悪い。横柄だ」「客に向かってあからさまにため息をつくとは何事か」などとクレームが来るような案件になるだろう。しかし何を隠そう、ここはアメリカだ。海を渡れば日本ではあり得ないこともまかり通ってしまうのである。指紋認証で一悶着あったものの、私は無事に入国できた。
入国後はバスでタイムズスクエア周辺に向かう。今までインターネット越しに見ていた景色を生で見られて感動した。タイムズスクエアに行ったことで、ニューヨークに来たんだなと実感する。これぞアメリカだ、といった感じだった。現地在住の日本人女性がガイドしてくれたけれど、「ニューヨークのオカン」と名乗っていたので誰もが大笑いしている。そんな彼女がネイティブと流暢な英語でやりとりしているのを聞いて、私は彼女を尊敬の眼差しで見ていたのだ。私も絶対にこうなりたいと考えた。いつか海外移住するぞ、とも。