3.光あるところに影あり
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数年後
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僕と怜は、情報系の専門大学に入学した
もちろん同じ学校だ。
高校も同じところに入学した。
高校でも専門学校でも怜は女の子から人気だった。
僕はというと怜のおまけという存在になっていた。
だけどそれでいい。
僕は怜が隣にいてくれたら幸せだ…。
怜はいつも困った顔をしていた。
「俺、何もしてないんだけどな…。」
まさに怜が言ったように、怜は部活やサークルなどには入っていない。
授業は真面目に受けていて、休み時間は僕と一緒にいる。
お昼は、一緒に学食に行ったり、コンビニに行ったり。
兎に角、怜はほかのクラスとの交流はほとんどしていなかった。
なのに、怜は学校中の女の子から人気を得ている。
怜がイケメンでカッコいいのは分かるよ…?
専門学校に入学したらまた一段とかっこよくなってるし…。
一目惚れしたり、好きになっちゃうのは仕方ない…と思うよ?
けどさ、流石に人気すぎるよ。
僕は怜がいれば友達は作らなくてもいいと考えていた。
だけど怜は?
怜は、僕といつも一緒にいるせいで友達が欲しくても、僕がいるから友達が作れないんじゃ…。
そんなこと考えていると、飲み物を買って来ていた怜が戻ってきた。
「碧夜は本当に飲み物要らなかった?」
怜は飲み物くらい奢ってあげるのに、という表情で僕に聞いてきた。
「うん、大丈夫。ありがとう。あのさ…」
僕はその気遣いに感謝し、気になっていることを聞こうと話を切り出そうとするが、途中で女の子に遮られてしまう。
「れ、怜さん!一緒に写真撮ってくれませんか!?」
女の子は怜をアイドルか何かだと思っているのだろうか。
緊張しながらもとても明るい表情で怜に頼んでいた。
怜はというと、少し怪訝な顔をしながらも女の子に対応する。
「碧夜、ごめんね。ちょっと行ってくる」
そう言い残し怜は女の子のところに行ってしまった。
怜は女の子に注意はしていたものの女の子は気にした様子はなく、
軽く「ごめんなさ~い」
と言って写真をお願いしていた。
どれだけ怜と写真を撮りたいんだ。
「俺が一人の時以外、そういうのはやめてね。今回だけだからね」
僕はそんなことを言っている怜に目を向け優しい目をする。
そして女の子の方に目をやる。
嫉妬や憎悪などの眼差しが女の子を差す。
しかし、誰も碧夜には目を向けない。
碧夜の影が薄いというわけではない。
怜が眩しすぎるのだ。
光あるところに影あり。
とはよく言ったものだ。
碧夜は静かに息もしないくらい無意識にとんでもなく集中していた。
女の子を視線で殺さんとする碧夜を誰かが見れば、腰を抜かしてしまうだろう。
それほどにまで、碧夜の嫉妬や憎悪が強いのだ。
だが、碧夜は自分自身で殺気とも言える眼差しを女の子に向けていることに気づいていない。
無意識に女の子を睨みつけていた。
写真撮影が終わったのか、怜が女の子と別れの挨拶をしていることに気づき、碧夜は正気に戻った。
怜は申し訳なさそうに謝罪した。
「本当にごめんね。注意しといたからもう来ないと思うよ」
「気にしないで、怜も大変だね」
僕は、怜の事情はよく分かっているから女の子が来ても何もないふりをしていた。
「本当だよ。勘弁してほしいね」
怜は面倒くさそうな顔をしながら、去っていく女の子の後姿を見る。
そんな怜を見た僕は、また無意識に女の子を睨みつけていた。
碧夜の至近距離にいた怜は、その殺気とも言える雰囲気を感じ取り、体が身震いする。
慌てて女の子の背中を見ていた視線を碧夜に戻すが、いつも通り優しい笑顔を浮かべている碧夜がそこにいた。
「今のは…」
碧夜にも聞こえない程度の声量で囁いた。
すると、授業開始のチャイムが鳴る。
碧夜と怜は急いで席に着いた。
怜は一番後ろの窓側の席に座り。
机に伏せ、周りから見れば寝ていると思われるような態勢とった。
そして、周りの人に気づかれないように不敵な笑みを浮かべ
「もう少し…」
と呟いた。