プロローグ
「翼葵!これの資料をまとめておいてくれ!」
「翼葵!これも頼んだ!」
「翼葵!これもよろしく!」
僕は翼葵 碧夜。
23歳独身 ー1年目の社会人だ。
僕は小さいころからパソコンが好きで、工業高校を卒業し情報系の専門大学を卒業している。
そんな僕が働いている会社はコンピュータとは縁があるものの、任される仕事は別に好きでもない資料の作成だったり、お客様のクレーム対応や困りごとの対応がほとんどだった。
僕がやりたかった仕事は、エンジニアとして機械に命を吹き込んだり、機械のバグを修正したりする仕事をやりたかった。
会社に入社して1年目はそんなものかと脳に言い聞かせ何かと頑張っている。
「わかりました!やっておきますね!」
異常な仕事量にも、「1年目だからそんなものか」と、脳に言い聞かせて凌いでいた。
ふと、社内にある時計を見ていると時間は、17時55分だった。
定時は18時だが、この調子では定時には帰れない。
僕は溜息を吐きながら囁いた。
そんな僕に近づいてくる一人の上司が目の端に映る。
「翼葵君、私はもうすぐ帰るから、残りの資料を片付けておいてくれ」
と、真顔で言い放ってくる。
僕は、人からの頼み事は、それも仕事になると断れない性格をしている。
ほんと...いい性格だよ...。
僕は心の中で自分に嫌味を含む言い方で吐き捨てた。
「わかりました...!お疲れ様です!」
「あぁ、お疲れ。君も早く上がりなさい」
短い挨拶を交わしながら渡された資料の量を見る。
上司の最後に言い放たれた言葉に眉がピクっと反応してしまう。
「これじゃ、早く上がりたくても上がれないよ...」
そう上司や周りの社員に聞かれない程度の呆れた声で言った。
家に帰っても一人だし特にやらなきゃいけないこともないので、残業する分には文句はなかった。
残業が当たり前なのも「1年目だから...」という理由で気にせず、黙々と仕事を片付けていた。
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数時間後
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「やっと終わったー!」
車内にある時計を見てみると22時を回っていた。
9時出社の22時退勤。
今時珍しいブラック企業なのかもしれない...。
と心の隅で思いながらデスク周りを片付ける。
仕事はパソコンですべて行うのだが、新入社員たちはパソコンの操作やソフトの使い方,タイピングスピードなど、諸々に慣れておらずまだ残業している社員もいた。
僕の場合は、昔からパソコンが好きだったのもありブラインドタッチはお手の物、そしてキーの入力スピードは速い方だと思う。多分...。
だから仕事を終わらすのが早いのだろう。
そんな僕ですら22時に仕事が終わったのだから仕事量は相当のものだったとうかがえる。
残っている社員になぜか申し訳ない気持ちを抱きながら、お先に失礼します。と言い放ち会社を後にした。
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電車に乗り家に着くころには、0時を回っていた。
「はぁ、疲れたぁ....」
一人暮らしなので1Rのアパートに住んでいる。
内装は、デスクトップが一台部屋の隅に置かれており。
ベッドはなく布団を敷いていつも寝ている。
僕は来ているスーツをハンガーにかけ、デスクトップの横に置かれているハンガーラックにしまう。
そのまま風呂場に行き体を洗う。
某通販サービスでまとめ買いしてあるカップ麺を手に取り湯を入れアラームを3分にセットし待つ。
その間に折り畳み式のテーブルを出し、それから明日の準備をする。
ちょうど準備が終わったタイミングでアラームが鳴り、淡々とカップ麺を食べる。
そして、デスクトップに置いてある写真に目が移る。
大学を卒業するまでいつも隣にいてくれた親友に思いにふけるのであった。