プロローグ
社会人6年目、いやはやめでたく社畜人生6年目を迎えた今日、俺は異世界に召喚されていた。
正確に言うと、2度目の異世界召喚だ。
1度目の召喚は高校3年、18歳の頃で、国の王様によって召喚されたが、俺の魔法の才能に嫉妬した聖女の謀略で現実世界に戻されている。
当時は急に現実世界に強制送還されて、お世話になった人達に別れも告げられずショックだったが、なんせもう10年経ったんだ。次第に記憶は薄れ、現実に向き合おうとほんの数時間前まで社畜人生に明け暮れ、躍起になっていた。
でも、今俺を見つめている男(恐らく召喚した張本人)は一体何者なんだ?
てか、なんで俺、この男に組み敷かれてるんだっけ…?
「やっと俺のところに戻ってきた、もう絶対に離しません。師匠。」
師匠だと?俺の事を唯一師匠と呼び慕ってくれたのは、、
「おまえ、まさか、ジルなのか…?」
俺が発したその言葉に男は頬を綻ばせ、その怖いくらい美しい顔に笑みを浮かべた。
「覚えていてくれたんですね、師匠。俺、10年も待ちました。貴方だけを想って。責任…取ってくれますよね?」
あんなに小さくて可愛かった俺の弟子が、
こんなにデカくなって、、と感動したのも束の間、
10年後の異世界、俺を嵌めた聖女も居なくなってるし、俺の役職も魔法師団長補佐官に変更されてるし、ましてや住所も公爵家になってるし。なんか変だ。
にしても俺の事をずっと想ってた…?責任?なんの事だ?
なんか順調に囲い込まれている気がするんだが。