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第二十八話『早すぎる行き詰まり?』

 ひょんなことから……というかリーシアの目論見通りになる形で出会い、奇妙な縁から俺たちと旅路を共にすることになったコハル。彼女の加入は、俺たちにとっても一つ転機になりうるものではあったのだが――


「……俺たちが入れる街、本当に近くにあんのか……?」


 それよりも大きな転機、つまりリーシアの復活により、俺たちの生活は明日の宿さえ分からないものへと変わりつつあった。


 三人で当てもなく平原を歩いて、もう四時間くらいは経っただろうか。本来ならどこかで情報収集が出来ればいいのだが、情報収集をするために街に入るのがそもそも無理なのだ。つまり、自然と俺たちは当てもなく平原をさまようことを余儀なくされるわけで。


「……どこかに、村や集落の一つでもあるといいんですけどねえ……」


「そうじゃな……欲しいものは多いが、まずは今日寝る宿を確保するのが先決じゃ」


 流れる汗をぬぐいながら、コハルとリーシアがげんなりとした顔で頷きあう。いくら身体能力に心配はないとはいえ、三時間も歩き続ければこうなるのはなんとなく納得できる話ではあった。


「街に入れねえんじゃ馬車を拾うことも難しいしな……となれば歩くしかねえってなるんだけど、歩いたら自然と腹は減るわけで」


「だからと言って料理をしようと思っても、その設備があるのは街の中ですもんねえ……結果的に、食料は私が持ってきた少しの保存食だけってことに相成ってるわけですし」


「悪循環、じゃな……。この国における街の役割の大きさを少々甘く見ていたかもしれぬ」


 リーシアがそう結論付けて、俺たちは揃って再度ため息。晴れやかな始まり方だったはずの俺たちの旅は、三時間で障害に突き当たっていた。


「いざとなったら、コハルだけでも街の中に行って何か買いだしてきてもらうってのもありだけど……それはお前をパシってるみたいでいやだしなあ」


 さっきまではいろんな頼みごとをしてきてはいたが、晴れて仲間となった今同じことを頼むのは正直気が引ける。リーシアもそこは同感なのか、俺の隣でうんうんと頷いていた。


「私的には全然ありなんですけどねえ……。ま、お二人がそう思ってくださることは嬉しいですし、私も強制はしませんけども。だけど、それしか手段が亡くなったときは迷わず頼ってくださいね?」


「ああ、その時は済まぬが頼まれてくれ。……じゃが、わらわたちはできるだけそうせずに済む手段を探したいのじゃ」


「その意気だリーシア、俺たちだってまだ詰んだわけじゃないもんな。……きっと、まだ情報が行ってない街は確実にある」

 

 あるいは、さっきコハルが言っていたみたいに小さな村や集落を見つけるのでもいい。とりあえず、文明が少しでも息づいているところに居られればそれが一番だった。


「……正直、最終手段はもう一つないでもないんですけどねえ。それをやるくらいだったらどうぞ私をパシってください、とだけはお伝えしておきます」


 そんな風に考えていると、隣からぼそりとコハルの頼みが聞こえてくる。もう一つの最終手段というのが何かは分からないが、正直使いたくないものなのは確かなようだ。


「大丈夫だ、最終手段なんてそう簡単に使わせねえよ。何もかも不足してる状態ではあるけど、根性だけはちゃんとあるからさ」


「ああ、お主の望まぬことはさせぬ。わらわとて家を抜け出した身、少しくらいの覚悟はできておるわ」


「……ありがとうございます! 私が知る限り唯一の確実にムラがあるところにいる手段なのでえ、隠しておくのはアンフェアかと思いまして……」


 俺たちの返答に、コハルは安堵したように頭を下げる。……それにしても、隠し事に良心が苛まれるタイプってとことん忍びに向いてないんじゃないだろうか。忍びなんて裏工作とか仕込みとかしてなんぼの仕事みたいなイメージあるし。


 ま、普通に生きてく上でならそれは美徳以外の何物でもないんだけどな。仲間としては隠し事をしないでいてくれる方がありがたいし、そういう意味でもコハルの素直さは嬉しかった。


「……しっかし、このまま闇雲に歩いててもらちが明かねえのは事実だよな……。街と嘉村とかまでは行かなくても、情報が得られるところがあればいいんだけどさ」


 正直な話、それすら機会がないから今の俺たちは困り果てているわけで。安全かつそれなりに快適に寝られるのならば、行きずりの馬車の中で雑魚寝できるだけでも俺としては感謝に絶えないくらいだ。


 現実はそれすらもなく、俺たちが歩く道には自然ばかりがあるのみだ。もうそろそろ昼下がり位にはなって来るだろうし、その時間帯になれば馬車の一つでも通るのかもしれないが――


「……そうじゃな。わらわたちも、そろそろ待つ側に回るべき時かもしれぬ」


 漠然と考えていた俺の横で、リーシアが何かを決心したかのような風にそう言いだす。その語り口からするに、リーシアの中には何かしらのビジョンが見えているようだ。


「……待つってことは、今ここで俺たちは待機することになるけど、それでいいのか?」


「ああ、それで充分じゃ。一足飛びに街を目指すのでなければ、待つことによって得られる機会も数多いじゃろう。そう――」


 そこで言葉を切り、リーシアは俺の方を見上げてくる。さあほめる準備をしろと言わんばかりに胸を張って、リーシアは大きく息を吸うと――


「辻護衛を試みれば、情報収集には十分事足りるのじゃからな!」


「……辻、護衛?」


 あまり聞いたことがないワードがその口から飛び出してきて、俺は思わず首を傾げた。

リーシアが最後に発した言葉の意味とは、そしてそこに見え隠れする策とは一体何なのか! 少し投稿頻度は落ちてしまうかもしれませんが、楽しみにお待ちいただけると幸いです!

――では、また次回お会いしましょう!

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