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これ以上、考えても仕方ないとルビーが居る中庭にダッシュする。

ジュリエットの記憶を頼りに必死に足を動かした。


そして、斧の代わりにマルクルスを連れて中庭に突入しようとした時だった。



ーーーーボスッ!!



鈍い音と共に何か柔らかいものに顔が埋まる。

潰れた鼻を摩りながら顔を上げると、そこには目を丸くした端正な顔立ちをした王子様が立っていた。

咄嗟の癖のようなものか……口から飛び出たのはまさかの挨拶だった。



「ご、ご機嫌よう、ベルジェ殿下……!!」


「……ご機嫌よう、ジュリエット嬢」



あまりの神々しいイケメン具合に目が眩む。

どうやらルビーとの顔合わせはマルクルスと口論をして追いかけっこをしているうちに終わってしまったようだ。



「ーー待てッ!!ジュリエット!!君は僕のことを世界で一番愛して、いると言って、いただろう、がっ!!」



体力が無くなったのか荒く息を吐き出し、左右に揺れて小走りで此方に近づいて来るマルクルスを見て、嫌悪感から体を強張らせた。

そして無意識にベルジェにしがみつくようにして力を込めていた。



「っ……!」


「ジュリエット、一体どうしたの?」


「ルビーお姉様、助けて下さいッ!!」



ひょっこりと可愛らしい姿でベルジェの背後から登場したルビーはジュリエットに名前を呼ばれたからか、嬉しそうに微笑んでいるが今はそれどころではない。



「ーーール、ルビー様!?」


「ご機嫌よう、マルクルス様」


「ルビー様は今日もとてもお美しい……!女神だ」



ルビーよりも先に挨拶をしなければならない人が居るような気がするのだが、彼の目にはベルジェは見えていないのだろう。


ルビーが視界に入った瞬間、面白いくらいにマルクルスの態度が変わる。

こうして見るとマルクルスのルビーへの態度は、かなり分かり易いものがある。

ジュリエットはそんな姿を信じないようにしたかったのだろうか。

それとも見ないふりをしていたのか。


取り敢えずはルビーにマルクルスの事を訴えかけて、この場を乗りきらなければならない。



「二人とも何をしていたの……?まさか喧嘩?」


「っ、そんな事ありませんよ!」


「でもジュリエットは"助けて"と……」


「この僕がルビー様の大切な妹を傷つけることなど有り得ませんよ!ははっ」



どうやらマルクルスはルビーの前では紳士な男を演じていたようだ。

ジュリエットを大切にすると、ルビーの機嫌が良くなることを知っていたのだろう。



「さぁ、行こう……ジュリエット。向こうでゆっくりと話そうか」


「嫌よッ!!」


「ジュリエット、ルビー様を困らせてはいけないよ」



余計なことを言う前に、口を塞ぎたいのだろう。

手首を掴まれて腕を引かれた為、ベルジェに助けを求めるように服を掴みながら必死に踏ん張っていた。



「ーールビーお姉様、聞いて下さいッ!マルクルス様は先程、わたくしと婚約したのはルビーお姉様に近付く為だって言ったんです!!!最低のクズ野郎なんです!!」


「え……!?」


「なっ……違います」


「許せませんッ!今すぐに婚約を解消したいのです!手伝って下さい」


「…………」


「…………」


「え……?」



ベルジェは何故だか分からないが、かなりショックを受けているようで「ガーン」という声がここまで聞こえてくるようだ。

少なからず同情が得られると思っていたのだが、何故かルビーは口元を押さえながらチラリと確認するようにベルジェに視線を送った。

二人の反応が予想外すぎて困惑していた。


(あれ……言ってること、おかしくないよね?)


本日、二回目の不安に襲われたところでマルクルスの低い声が耳に届く。



「ルビー様の前で貴様……ッ!」



マルクルスはルビーの前でキャラが崩れる事は避けたいようで、怒りからか手に力が篭る。

それを見逃さなかった。



「私には二番目になれと言ったんですよ!?だからっ、マルクルス様と婚約を解消したいと言ったら迫られて、追いかけられたんです……!」


「……!?」


「とても怖くて、私……!」


「嘘だッ!ジュリエットが僕を愛していないと訳の分からないことを言い出したから話し合おうと思っただけなんです!!」


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