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⑦②

上目遣いでベルジェの腕を取ったアイカは胸を擦り寄せている。

劣勢に立たされたら直ぐに手のひらを返して、この場で一番影響力がある人に擦り寄る……とてもアイカらしいやり口だが、いつもと違って焦りが見え隠れしている。



「ベルジェ殿下は、わたくしを気に入って下さってますよね?お茶も何度も御一緒致しましたし、お話ししました!!こんな事をしてくれたのはルビー以外に、わたくしだけでしょう!?」


「…………は?」


「わたくしこそがベルジェ殿下に相応しいのです……っ!」


「……アイカ嬢は一体、何の話をしているんだ?」



ベルジェはアイカの腕を引き抜いた後、ノーを突き立てるように手を伸ばしている。



「わたくしを綺麗だと、好きだと言ってくれたではありませんか……!」



それを聞いて、思わずベルジェを見ると彼と目が合った。 

大きく目を見開いたベルジェは顔を歪めた後に叫ぶように答えた。



「ーーー俺はッ、ジュリエット嬢が好きだ!」


「!!」


「なっ……!?」


「勘違いをさせたなら申し訳ないが、俺はアイカ嬢を特別だと思った事はない」


「…………ッ!」



令嬢達はクスクスと笑いを堪えているようだ。

呆然としていたアイカは羞恥に肩を震わせている。

どうやら自分がベルジェの『特別』だと示すつもりが、これだけの人数の前で直接、ベルジェの口から否定されてしまえばシラを切る事はもう出来ないだろう。



「……ずっと、ジュリエット嬢に想いを寄せていた」


「ベルジェ、殿下……!?」



突然の告白に名前を呼ぶ声が裏返ってしまう。

ベルジェは突然、その場に跪いて徐に手を引いた。

そして、今度は真っ直ぐに目を見つめてから口を開いた。



「もう一度言う!俺は……ジュリエット嬢が好きだ。君に、ジュリエット嬢に会う為にカイネラ邸に通っていたんだ」


「…………!」


「こんな俺が……君に相応しくないのではと思った。何度も諦めようとした。けれど気づいたらジュリエット嬢の事を考えてしまって……俺はっ」


「「「……!?」」」



突然の告白に驚き目を剥いたのは自分だけではないのだろう。

訪れた沈黙……誰も声を出さなかった。



「それに先程は、迷惑を掛けてすまなかった……!でも、あの気持ちは本物だ!本当は忘れて欲しくないっ!忘れないでくれ!!君が好きだッ!!!大好きなんだっ」


「!!」



その後、ベルジェは縋り付くような弱々しい声で答えた。



「ジュリエット嬢……今の俺は、嫌いだろうか?」


「…………!!」


「ジュリエット嬢に嫌われたくないんだっ……!!」



普段から完璧王子と呼ばれて、優雅で落ち着いた様子のベルジェからは想像出来ない熱烈な告白と、激しく揺れ動くような感情の波。

周囲に居る人達は男らしくも荒々しいベルジェの姿に顔を赤らめたり、口を押さえたりしながら新たな一面に驚いているようだった。



「今のベルジェ殿下は……嫌いじゃありません」


「……!!!」



そう言うと胸元を押さえて、ふにゃりと安心するように笑ったベルジェを見て、思わず此方まで赤くなってしまった。



「…………良かったぁ」



そして照れからベルジェと目を合わせられなくなり俯きながら答えた。



「むしろ、ベルジェ殿下の気持ちが嬉しいです……!」


「!!?」


「あの、ありがとうございます」


「~~ッ、本当か!?」



立ち上がったベルジェに凄い勢いで肩を掴まれてコクリと控えめに頷いた。

告白を受けてから、ずっと考えていた。

自分は『ベルジェ』をどう思っているのか、と。

ベルジェと時間を共にしていく事で少しずつ、少しずつ彼に惹かれていたのだ。


それをルビーや他の令嬢、アイカが好きなのだと勘違いして、気持ちに線を引いていた。

けれどベルジェに好意がある事は確かだ。


(私は……ベルジェ殿下の事が)


ベルジェに抱き締められながらチラリとリロイの方を見る。

肩をすくめた彼と同じく、周囲にいる人達にも祝福されるように拍手されていた。


するとアイカは苛々した様子で口を開いた。



「どいつもこいつも見る目のない馬鹿ばっかりで……本当、嫌になるわ」


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