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そして何故か斧の場所まで頭に浮かぶのだから、たまったもんではない。


(斧に…………呼ばれているわ)


そこに行かなければいけないという義務感を振り払う様に首を横に振った。

しかし斧を手にする前に、意識を取り戻して色々と思い出せたのは不幸中の幸いと言えるだろう。


恐る恐る窓の下を覗き込むと、そこには楽しそうに会話しているベルジェと、結果的には様々な令嬢達を破滅に追い込んでいくルビーの姿があった。

目が覚めるタイミングまでバッチリである。


(うわぁ……生ルビー、めちゃくちゃ神々しい)


キラキラと輝くような笑顔が眩しい。

そしてルビーと同じくらいか、それ以上に輝きを放っているベルジェは、あのルビーを前にしても平然と会話している。

他の令息達に比べてルビーに対しての熱量は控えめなようだ。


文武両道、品行方正、完全無欠の王子様もルビーの素直で優しい性格と美女具合に、どんどんと落ちていくのだろうなぁ……と考えながら空を眺めていた。

今日はよく晴れた日である。

温かな日差しに照らされて、眠気に襲われながらも思っていた。


(コレ……どうすればいいの?)


ジュリエットの件をきっかけにルビーはベルジェとの距離がグッと近付いていく。

それにはジュリエットの出番が必要なのかもしれないが、こうなった以上、斧を持って突撃するつもりも、わざわざ処刑台に向かうつもりもない。


それにベルジェとルビーは元々好きな人がいた筈だ。

互いに傷を舐め合ううちに惹かれていくのではなかったのだろうか。


(ベルジェって、誰に恋をしていたんだっけ?ルビーは?うーん、思い出せない)


物語の結末がどうなったのかは、記憶が曖昧で上手く思い出す事が出来ない。

そもそも最後までこの物語を読んだだろうか?

何巻まで続いたのか。他には誰が出て来たのか……。


(忘れたわ……)


しかしながら悪役令嬢であるジュリエットの斬新な攻め方が最も印象的だった事は間違いないようだ。


(斧を持ってヒロインに襲い掛かる悪役令嬢なんて他に居ないもの……)


どうやら前世の記憶によると普通のOLとして働いていたようだ。

社会の荒波を乗り越えて、逞しく立派にお一人様として生きてきた記憶を思い出せただけで、人生が楽しくなりそうだ。

この場合『ジュリエット』としてどうするべきかと考えを巡らせて数分……。


(うん、めんどくさい。もう好き勝手やってくれ……!)


そう結論付けをして、いそいそと広くてフッカフカなベッドへと戻った。



「あー………幸せ」



仕事帰りのビールを飲んだ後のような気持ちのいい声を出しながら、大の字にベッドに寝転がる。

そのまま二度寝をしながら時が経つのを待とうとしたのだが……。



「ーーーお嬢様、お目覚めですか!?」


「まだ寝ています」


「起きたのですね!直ぐにマルクルス様を呼んで参ります……!」


「は……!?ちょっと待って!!」



ジュリエットが目を覚ますまで待っていたのか、将又再び斧を持たせる為か……追い討ちを掛けるように出てきたマルクルスの名前。


(そもそも一ヶ月で婚約だもんね……何か裏があってもおかしくないわね)


ジュリエットは現実を受け入れられずに、マルクルスではなく姉のルビーを責めたのだろう。

しかしよくよく考えると悪いのはルビーではなく「僕こそルビー様に相応しい」という自意識過剰過ぎる理由で近付いてきたマルクルスの方ではないだろうか。


恐らく訳の分からない告白をした際にジュリエットに返事を貰えなかった事が気になるのか、残念ながらまだ屋敷にいるようだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] >他の令息達に比べてルビーに対しての熱量は他の令息達に比べて控えめなようだ。 一文の中に「他の令息達に比べて」が2回出てきています。
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