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馬車に乗って、キャロラインの口の悪さを全く気にする事なく話を進めていた。
時折、無意識なのだろうが此方を気遣うような言葉に、ついつい心を擽られてしまうが、そんな態度が気に入らないのか興奮して口が悪くなっていくキャロラインを制していた。
「そういう言い方は人に誤解を与えると思いますけど」
「もう少し柔らかく言うだけで印象は変わるかもしれませんよ?」
そう言うと「分かってますわよ!!そんな事ッ」というキャロラインに「なら、どうしてやらないのですか?」というと、何か思う所があったのかハッとした後に気まずそうに顔を伏せた後、小さく首を横に振った。
しかし根強く話を聞いていくうちに、キャロラインの本音が見え隠れしてくる。
「リロイ様はいつも誰とパーティーに……?」
「色々な御令嬢と参加しているわ!彼はモテるし、カッコいいし、可愛いし、頭もいいし、面白くて、美しいもの……っ!」
「あー……そう、かもしれませんね」
「でもわたくしは最近ずっと邪険にされていて……昔はっ、こんなにッ」
「……」
「貴女が羨ましい……!リロイにパーティーに誘われたでしょう?それに楽しく仲良く話をしていたわ。手を握れて抱き締めてもらえるなんてッ!!わたくしとは恥ずかしくて……もう繋げないって言われたんだからぁ~!」
リロイと楽しく仲良く話した覚えは全くないのだが、滴る涙と鼻水を拭うようにキャロラインにハンカチを渡す。
するとビーンと思い切りのいい音と共に鼻をかんだ。
遠慮がないな、と思いつつもキャロラインは鼻を啜りながら肩を揺らしている。
「リロイ様とパーティーに一緒に参加するのは初めてではないのですよね?」
「幼い頃は何度も一緒に……。でも、リロイは他の令嬢と参加するようになって!わたくしはだんだんと相手にっ、されなくなってぇ……!」
「そんな事はないと思いますけど……」
どう見てもリロイはキャロラインを気に掛けているような気がしたが、二人が幼い頃はどんな関係性だったのかは分からないがキャロラインにとっては今のリロイは相当、冷たく映るようだ。
「嘘よっ!!だって他の令嬢達にはいっつも優しいのに、わたくしには……わたくしにだけは冷たいものッ」
大きな瞳がうるうると潤み、此方を見つめている。
唇を噛んで悔しそうにしている姿を見ているとリスを思い出して「可愛いなぁ」と思えてくる。
リロイはキャロラインを嫌っている様子はなかったが、ここは嫌だ、という所は明確な態度で示していた。
それは全てキャロラインの将来を案じているからだ。
(……そこさえどうにかなれば)
けれどキャロラインは頑なに態度を変えようとはしない。
リロイもキャロラインではなく、他の令嬢達を誘うようになった理由は気になるところだ。
「リロイ様は普段どんな御令嬢と一緒にいますか?」
「綺麗で、大人っぽくって……それにリロイはいつも話が通じる人が好きって」
その後、キャロラインに名前を聞いていく。
記憶と照らし合わせると全てキャロラインとは真逆のタイプである事が分かる。
(好きの裏返し……とか、あり得るのかしら)
「今回…………リロイとパーティーに参加出来ること、本当はとても嬉しいの」
「…………」
「わ、わたくしはずっとずっとリロイの事が……っ!!」
そう言ったキャロラインの顔がどんどんと真っ赤になっていく。
しかしこのままでいけば同じ事の繰り返しになってしまうのは明白だろう。
それにキッカケさえあれば、二人の距離はグッと縮むような気がした。
「これはあくまでもわたくしの乙女の勘なのですが…………。その前に、キャロライン王女殿下は私の話を怒らずに最後まで聞いてくれますか?」
「な、何よ……!言ってみなさいよッ!!」
一応ではあるが確認は取った。
それにキャロラインの受け取り方次第では再びやってくる処刑台への道。
言葉を選びつつ、口を開く。




