④①
あの後、ニヤニヤとしているリロイと心理戦を繰り広げつつ、持っていたクジを引いた。
パーティーに出るペアが決まったのだが一つ、問題が起きた。
(まさかベルジェ殿下とペアになるなんて……)
そしてルビーとモイセス、リロイとキャロラインがペアとなった。
同じ色のクジを持ってベルジェの方を向いて、気まずさにヘラリと笑うと彼はクルリと背後を振り向いたままプルプルと小刻みと震えていた。
リロイが笑みを浮かべながらベルジェの背中をバシバシと叩いていた。
運命の悪戯か、リロイの悪戯か……。
まるでベルジェとルビーの間に入り『悪役令嬢を演じろ』と言われているようだ。
モイセスを見ると、彼も同じく困惑した様子だった。
ルビーは何故か分からないがクジを凝視したまま固まっている。
キャロラインは「なんでわたくしがリロイなんかと……」と文句を言いながらも喜びを隠せないようだ。
このペアでいいのかと不安になり、その事を問いかけようとする度にタイミングを見計らったかのようにリロイが口を挟んでくる。
次第に話題が流れて何事もなく話は進んでいた。
しかし、やはりこの状況は良くないのではないかと先程とは違い、何故か嬉しそうにしているベルジェの耳元でコッソリと問いかけた。
「あの……いいんですか?ベルジェ殿下」
「え……?」
「本当はわたくしではなく、お姉様と一緒にパーティーに出たかったのではないですか?」
「……!」
「今からでもモイセス様に頼んで、換えてもらいましょうか?」
もしかしたらベルジェも同じ気持ちなのではないかと思っていた。
それにモイセスとなら安心して参加出来るだろう。
しかし返ってきたのは意外な言葉だった。
「いや……俺はジュリエット嬢と参加したい」
「そんなに気を遣わなくても……」
「ーーー違うんだッ!!」
「………!」
勢いよく否定された事に驚いてしまう。
しかしベルジェは「すまない……」と言った後に、唇を閉じたり開いたりと懸命に何かを訴えかけているようだ。
「……っ」
「あの…………ベルジェ殿下?」
「すまない、でも……本当は俺はッ」
「ーーーーベルジェ!いつドレスを買いに行くの!?」
「リロイ様……」
「~~~っ!!」
リロイが嬉しそうに此方に手を振っている。
ベルジェは額を押さえながら思い悩んでいるようだ。
「ジュリエット嬢も勿論一緒に行くでしょう?」
「ですが、私は……」
「何でこのわたくしが子爵令嬢と一緒に買い物をしなければなりませんのッ!?絶対に嫌ですわ」
キャロラインが此方をキツく睨み付ける。
ベルジェは人前でなければ立派な淑女だと言うが、気性が激しい我儘王女様という印象は拭えない。
恐らくリロイと二人きりでドレスを選びたいう意味合いが含まれているのではないだろうかと推察出来るが、この言い方では誤解を与えかねない。
「はぁ…………じゃあ僕が勝手に選んでくるからキャロラインは来なくていいよ」
「なっ……!」
「そんな風に言われてジュリエット嬢も気分が悪いだろうしね」
「……ッ」
「…………私は別に」
「それに一緒に店に行ってもキャロラインが、あーじゃないこうじゃないって、いつも煩いしさ……本当、そういうの聞いてるだけで嫌な気分になるし」
「べっ、別に構いませんわッ!!精々わたくしが気にいるようなドレスを選ぶ事ですわねッ!!」
「ジュリエット嬢、ベルジェ、向こうで予定を決めよう」
苛立つキャロラインを無視したリロイに手を引かれるまま、少し離れた場所に向かう。
詰まらなそうなリロイの顔……キャロラインが絡んだ時だけ、リロイの仮面は簡単に剥がれてしまうような気がした。
不機嫌そうにツンツンと花を突いているリロイにベルジェが声を掛ける。




