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マルクルスと二人で初めて出席するパーティーを控えて、楽しみに準備をしていた。

彼に選んでもらったドレスを着て、あとは迎えを待つだけだった。


しかし何故か迎えに来たマルクルスは真剣な顔をして此方を見ていた。

どこか具合が悪いのかと思い、問いかけても首を横に振るだけだった。

何かあったのかと心配しても反応はイマイチだった。



「マルクルス様、どうしたのですか?」


「今日、僕は君に伝えたい事があるんだ……!!」


「……?何でしょうか」


「本当は…………僕はッ、女神であるルビー様に近づきたかっただけなんだ!!!」


「ーーーー!?」


「僕はね、この世界の宝であるルビー様を守る為に存在して居るって事さ」


「……は?」


「それが僕に与えられていた使命だと気付いたんだ!!君の側に居てルビー様と沢山喋り触れ合うことが出来て確信した……やはり僕が一番、ルビー様に相応しいとッ」



一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。


(お姉様に近づく為に婚約した……?僕に、与えられた使命??なに、それ…………?私は、わたしは……お姉様に近づく為の駒だったってこと?)


怒りを通り越して、どこか別の場所にいるような感覚だった。

今まで苛立ったり、呆れたり、怒ったり出来たけれど、それすら吹っ飛ばして何も感じない事が不思議だった。



「本当は利用だけしようと思っていたんだ。けど君が僕に一生懸命尽くしてくれる愛らしい姿を見て、ジュリエットの良さに気づく事が出来た!なんと僕の心が少し君に傾いたんだ」


「…………」


「しかし残念な事にルビー様は僕しか幸せに出来ない……だから僕は、これからは君も一緒に愛していこうと思う。二番にはなってしまうけど、ジュリエットは僕の理解者だから……分かってくれるよね?」


「…………」


「勿論、君なら"それでもいい"って言うのだろう……?僕の気持ちはジュリエットにも傾きつつあるなんて凄い事だからね。ルビー様には敵わないかもしれないけど、僕達はきっと良い関係を築けるよ!!」


「…………」


「ジュリエット……?聞いてる!?」


「…………」


「ーージュリエット!ジュリエットッ!?」



そこから先のマルクルスの声は、嘘みたいに何も聞こえなくなった。

視界がぼやけていき、声が遠くなっていく。



「ーーージュリエット!?」



名前を呼ばれた気がしたけど、あまりのショックにそのまま意識を手放したのだった。





と、いう記憶を思い出しながら起き上がった。

一心不乱にベッドを飛び出して、鏡に掴みかかる様に顔を寄せた。

ミルクティーベージュのふわふわとした髪、ピンク色の瞳。

小動物のように大きな目は少し吊り上がっていて意地悪そうに見えた。

ペタペタと顔の感触を確かめる様にしてガクリと項垂れた。


(こんな事って……本当にあるのね)


先程まで夢のような出来事は本当に起こった事だと理解できた。


(私は……ジュリエット。この小説のヒロイン、ルビーの妹)


自分が序盤に出てくる『悪役令嬢』の一人であるという記憶が戻ったことにゾッとしていた。


ジュリエットはこの後、全ての元凶であるルビーを消し去るために中庭にあった斧を持って、この国の王太子であるベルジェと顔合わせをしているルビーの元へと乗り込むのである。


思い切り斧を振り上げて、ルビーを消そうとするジュリエット。

そこでルビーを庇うように前に出たベルジェの近衛騎士が斧を受け止めて怪我を負いながらもジュリエットを拘束。

その後、治療を受けるも騎士は命を落としてしまう。


ジュリエットが行き着く先は処刑台だった。

そこで狂ったように「殺してやる!殺してやるーッ!!」と、叫び続ける、というのがジュリエットの出番の最後だ。


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