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けれど現実はそう甘くはなかった。

成長して物事が分かるようになるにつれて次第にジュリエットの心に影が差すようになる。


ある時は気になっていた令息がルビーに会った途端、彼女に惚れ込んでしまう。

またある時は良い雰囲気になった令息に、ルビーが挨拶しただけで、一瞬で心変わりしてしまう。

「いいな」と思っていた令息達は、ことごとくルビーの魅力に落ちていく。


(……お姉様は美人だもの。仕方ないわ)


美しい金色の髪に宝石のルビーの様に赤く透明感のある瞳と雪の様な真っ白な肌。

スッと通った鼻筋にパッチリとした目元と豊満な胸とキュッと締まったウエスト。

風が吹いたら倒れてしまいそうな細い体は同じ女性として羨ましいと思うようになっていく。


(大丈夫。偶々なのよ……!今度は絶対に上手くいくわ)


しかしそんな考えも長くは持たなかった。

ジュリエットが婚約者を作ろうとしても、全員がルビーに惚れてしまい、何もかもが上手くいかなくなっていくような気がした。


「ルビー様が好きだ。だから君は無理なんだよ」


何度そう言われて断られたか分からない。

そんな日々が続き"自分が不運に見舞われるのは全てルビーお姉様のせいだ"と思うようになっていった。

いつの間にか、ジュリエットの中でルビーは『邪魔者』で『敵』になったのだ。


それでも以前と同じように近付いてくるルビーに苛々はどんどんと募っていく。



「いい加減にしてよ!!ルビーお姉様の糞ったれ!!絶対に許さないんだから!!」


「ジュリエット……わたくしは」


「お姉様なんて大っ嫌い!!私より少しだけ美人で胸が大きいからって調子に乗らないでよねッ」


「……ジュリエット」



悲しげに瞳を潤まして俯くだけで、直ぐに数人の令息が集まりルビーを慰めている姿を見て、思いきり唇を噛みながら背を向けた。

苛立ちと嫉妬はどんどんと大きくなっていく。

でもその度に違和感を感じていた。

チクリ、チクリと胸に棘のようなものが刺さっていく。



「お姉様さえ、居なければ……!!」



こうしてルビーに向けて憎しみのままに言葉を吐き出す度に思うのだ。


(あれ……?このセリフなんかどこかで聞いた事があるような)


首を傾げながらも、姉と戦う日々を過ごしていた。


時には庭で捕まえた蛇や蛙を投げたり、お気に入りのドレスを隠してみたりと地道な嫌がらせを続けて困らせていた。


しかしルビーは怯えるどころか蛇や蛙を可愛がり、ドレスが無くなり困っていると直ぐに令息達がドレスを持ってくる。

それを嬉しそうに受け取る事もなく遠慮して見せるのだ。

それすらも計算している行動のように見えて、益々腹立たしく思った。


(なんで!?何でお姉様ばっかりいい思いをするの!?)


それなのに選り好みをしているのか、もっと高位な令息からのアプローチを待っているからなのかは分からないが、なかなか婚約者が決まらない。

そのせいで此方の婚約者も決まらない悪循環に陥っていた。


毎日毎日、懲りずに「あのね、ジュリエット」と言って、笑顔で話しかけてくる。

態度悪く接しても拒否しても暴言を吐いても近付いてくるのだ。

「わたくしはジュリエットの姉だから」「心配だから」

そんな意味の分からない理由で……。


しかし『ルビー』が側にいる限り、何もかもが上手くいかないと確信していた。

一緒に居たくないと拒否すれば、令息から鋭い視線を送られることになり、印象は最悪になる。

姉は今日も令息に囲まれて幸せそうに見えた。


ルビーを恨んでいる令嬢はジュリエットだけではなかった。

妬みや僻みを持つ令嬢も居れば、もう敵わない存在だと諦める令嬢も居た。


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