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「……もう私は、貴方を愛していないわ!」


「!?」


「それに本当はお姉様が好きなんでしょう!?なのに私と婚約したままでいようなんて有り得ない!」


「ッ、どうしてそんな風に心変わりするんだよ!?」


「だ・か・らッ!!!お姉様に近づく為に私を利用して婚約したとかいうクソみたいな宣言を聞いて、どうしてまだ貴方が好きだと思う訳ッ!?」



大声で叫ぶように言っても婚約者であるマルクルスには届かないのか、納得出来ないようだ。

二人で怒鳴り合っているのだが、「本当は姉を崇拝している。でもお前もまぁまぁ好きだぜ」と言われて、心変わりするなと言う方が無理だ。


(私の感覚がおかしいの!?違うわよね……!?)


マルクルスはさも当然のように言っているが、そんな理由で婚約されたジュリエットの立場からすれば「ふざけんな」である。


嫌悪感に鳥肌が立つ。



「だって……だって、あんなに僕のことを好きだと言っていたじゃないか!!」


「もう嫌だって言っているじゃない!!大っ嫌いッ」


「ーーッ!?」


「顔も見たくない。今すぐ婚約を破棄したい。一緒に居たくない。これでいいかしら?」


「どうして……そんな急にっ!おかしいじゃないか……!」


「はぁ…………馬鹿なの!?もうさっさと婚約を解消しましょう?これ以上、話しても無駄よ」



言い聞かせるように言うとマルクルスは唇を噛みながら瞳に涙を浮かべている。



「くっ……もういい!!こんなに恥知らずな女だったなんて」


「ハァ!?」



怒りが爆発寸前である。



「もう僕の前に二度と顔を見せっ……「お前がなッ!!!!」


「…………!?」



大声で被せるように叫ぶとマルクルスは大きく目を見開いた。




ーーーーこうなった経緯を説明しよう。




先ずは、私が誰に転生してしまったのか。

それはとある小説の主人公の妹であるジュリエット・カイネラというカイネラ子爵家の次女である少女だった。

その主人公というのが、姉のルビー・カイネラである。


妹のジュリエットは姉のルビーに対して強い劣等感と嫉妬心を持っていた。

ジュリエットはカイネラ子爵家に生まれた事をいつもいつも最悪だと思っていた。

何故ならばジュリエットの人生は、常に美しい姉の“ルビー"に邪魔をされていると感じていたから。


ジュリエットから見て、美し過ぎる姉はどこへ行っても特別なお姫様だった。


ニコニコと笑うだけで歓声が起きるような美貌を持ったルビーは様々な呼び名があった。

『ジークサイドの宝石』『天から舞い降りた天使』『美の化身』『女神』

幼い頃はそんなルビーを心から尊敬して憧れていた事もあった。


美しいものに喩えられて、皆から愛される姉の姿を見ながら育ったジュリエットは自分もこうなりたいと強く思っていたし、自分もそうなれると信じていた。


『お姉様が世界で一番大好き』『お姉様はわたくしの自慢よ』


そんな言葉をジュリエットは毎日毎日、言っていた。

恐らく絵本に出てくるお姫様を「可愛い」と言う感覚だろうか。

小さい頃はいつも仲が良くて、ずっと姉の後ろにくっついて回っていたジュリエットを、ルビーもそれはそれは可愛がってくれていた。



「ジュリエット、ありがとう」


「可愛いお姉様が大好き……!」


「わたくしも、貴女が大好きよ」


「私もお姉様みたいになれるかな?」


「……ジュリエットには幸せになって欲しいわ」


「私……?お姉様は幸せにならないの?」


「わたくしは…………ジュリエットが幸せならいいのよ」



まだ何も知らなくて、何も考えなくて済んだあの頃は、全てが輝いて見えていた。


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