05話 災いを解き放つ
後半にほんのちょっと、グロい?表現が入っています。
テルドはこの空間の奥へ避難させた。
ドォン!
魔物は拳を振り上げ、ヒュノ目掛けて振り下ろした。
後ろに飛んで避け、その隙を狙ってテルドのいる出口へ走る。
「はぁ……はぁ……!」
「んだよ、あいつ〜」
壁に寄りかかりながら、だるそうな表情を浮かべたテルドがそう言った。ヒュノは恐怖と走りで息が切れていた。
「大丈夫か、ヒュノ」
「なんとか。 ……あれ見て」
ヒュノの指差す先には、扉のついた小さな部屋のような場所があった。濡れたままのヒュノは歩いて行き、扉に手を伸ばす。
「なんだこりゃ??」
テルドが、小さな部屋の中を見つめる。
円形の、ほんと小さな部屋。
まるで、後付けで誰かが造ったみたいに。
「なんだろう、この本と、指輪」
丸い部屋の中央には、円形の木のテーブルと、その上には分厚い本が1冊と、赤い宝石の付いた指輪が置いてあった。
「シウに渡すか」
「そうだね、シウなら何か分かるかも」
そう言い、ヒュノが本に触れた、その時だった。
本は光を放ち、白く丸い球となって、天井に飛んで消えて行った。
「うお!?な、なんだ!?」
「??」
ヒュノは首を傾げ、指輪の方を手に取る。
「落とさないように、ハメて帰るよ」
「そうだな、もう、奥は無さそうだしここが最新部ってことか?」
「そうかも」
「んじゃ、お前に夢を見せてたのって」
「あの本の光かもしれない。シウに報告しよう」
「そうだな」
小さな部屋を出て、少し道を歩く。
そして
「あ〜、あいつがいるんだった」
「……さっきみたいに、上手く避けていこう。俺が先頭を切る」
そう言うと、ヒュノは剣を構え、ひとりで走った。
「おい!」
ヒュノは素早い足取りで魔物の目の前まで行く。
魔物は咄嗟に拳を握り、ヒュノに伸ばした。
「くっっ!!」
その拳を剣で防ぐも、力が強く後ろに突き飛ばされた。
ヒュノはすぐに立ち、剣を構え直す。
その時だった。
ぼわっ!
ヒュノの持つ剣の刃に、赤い炎が宿ったのだ。
「……へ?」
『グルル……!グァァァァッ!!』
魔物は急に雄叫びをあげると、今までよりも素早いスピードでヒュノに向かって来た。
「な、なんだよ!?」
「ヒュノ!」
ヒュノをテルドが突き飛ばし、ふたりともその攻撃は当たらなかった。だが魔物は、ヒュノだけ目掛けて走ってくる。
「おらっ!!」
走る魔物に剣で傷を入れるも、魔物はテルドには見向きもしなかった。
まるで、盗られては行けないものを盗られた人みたいに。
「……やってみるか」
ヒュノは、剣に集中を込めた。
剣の炎は更に激しいものになっていく。
激しく燃える剣を持って、ヒュノは剣を振った。
魔物の拳に向かって剣を振ると、魔物の拳が焼き切られるように真っ二つになった。
そのまま、ヒュノは剣を両手で持ち、左から右に体を回転させながら2回、魔物の腹を焼き斬った。
魔物は血を噴き出し、そのまま倒れた。
「ヒュ、ヒュノ?お前……?」
その時、ヒュノの意識はすぐに遠くなっていった。
倒れるヒュノに、テルドは急いで駆けつけた。
☆☆☆☆☆
ズバァン!
男の頭に拳が飛んだ。
男は血を流し、そのまま倒れた。
「ひゃぁぁっ!」
「おい女、お前は知ってるか?」
「し、知らないぃぃ……」
「そっか」
すると、黒い男は女の顔面を素手で掴んだ。
「許してください!許してください!!」
男の手に、黒い力が宿る。
すると、女の顔は岩が砕けるようにボロボロと崩れ落ちた。
「貴様あああ!」
「……失せろ」
男が手を構えると、その手のひらから岩が銃弾の如く飛び、叫びながら剣を構え走る男の身体を貫通した。
辺りにいる村人たちは、男の使う謎の力を見て驚いた。
怯え、逃げ出す者もいた。
逃げた先には、黒い鎧に黒い兜を身につけた兵たちがいた。
「な、なんなんだお前た……!」
逃げた男が叫ぶ途中に、その首元に矢が飛んだ。
「やめい!わしが村長だ!!」
老人に矢を構える兵もいたが、仲間が止めた。
「……あなたが村長か」
「そうだ!」
謎の力を使う男は村長に近づく。
「この村に伝わる、魔法使いルナの話、聞かせてもらおう」
「……この村には、ない!」
「ん?」
「別の村だ!ここはアバカの村!お前らの求めるものはない!」
「アバカ……?」
「そうだ!」
すると、頭の良さそうな男がやって来て、謎の力を使う男の横に立ち、ひそひそとなにかを告げた。
「この村は用済みだ」
村長が安堵の表情を浮かべた後、その首が飛んだ。
この黒い兵士たちが動いてきます