04話 洞窟の先へ
休憩を終えたふたりは、再び歩き始めた。
歩いては止まりを繰り返し、遠くに聞こえる水の音を聞きながらまた進んでいく。
「この水の音、近くに地底湖でもあるのかな?」
「どうだろう、でも、進んでいくうちに遠くなっている気がする」
「水源が離れてるって感じかな」
「それも、確かめたいけど今は夢で見た場所を優先しよう」
「おっけー」
だけど、ここまで歩いても魔物一匹いない。
それがどうしても違和感だった。
外の明るい場所にはうようよいたのに、この薄暗く、少し広い洞窟の中に入ってからは全く見ていない。
「そろそろ、少し尖った岩が壁にある分かれ道があるはずなんだ。そこを右に進めば着くと思う」
「いよいよって感じだな」
そして。
ヒュノの言う通り、分かれ道があり、正面には尖ったツノのような岩が、まるで埋め込まれたような壁が見える。
「尖った岩とは聞いてたけど、なんか……これ、岩なのか?」
テルドはその岩を、つんつんと触る。
ヒュノも触って感触を確かめるが、形が異様に綺麗だ。
「これ、ツノを埋め込まれているのかも」
「何のために??」
「……目印かもしれない。行こう」
ヒュノは歩く速さを少し上げ、右に進んだ。
「それにしても、こんな所に人が来たってのかよ?」
「そうだと思う」
すると、ヒュノが突然止まった。
テルドも目を疑うような表情で、そして呟いた。
「行き止まりじゃん」
「……なにか、なにかあるはずなんだ」
「ここまで来て何も無いのは流石にキツいぜ?」
ヒュノは岩壁を叩いた。
壁に埋め込まれている小さな岩の粒を、ひとつひとつどかしていく。
「おいおいヒュノ、そんな事したら壁崩壊するぞ?」
「……あった」
ヒュノは少し後ろに下がる。
テルドが見ると、ヒュノが取った岩の隙間から、奥に広い空間が見えた。
「おいおい、マジかよ」
ヒュノは、剣を隙間に入れてぐりぐりと回し始める。
テルドも、他に取り除ける岩は無いかと探し、手でどけていく。
そして……
音を立て、壁が崩れ落ちたのだ。
「うお!?」
「……これは」
奥には、遺跡のような場所が奥に続いていた。
「え、なんだこりゃ??」
「行ってみよう」
明らかに、ここだけ雰囲気が違う。
石のレンガで造られた遺跡、道の両脇には水が流れていた。
道は一本だったが、左右の分かれ道が出てきた。
「こっから先は、夢で見てないんだよな」
「うん、とりあえず、右に行ってみよう」
右の道を進むと、今度は左への曲がり角。
そこを曲がると、道の真ん中に魔物がいた。
獣のような姿で二本立ち、青紫色の毛皮をしている。
目は赤く光っていて、外の魔物とは雰囲気が違った。
「……別の道、探すか?」
「そうだね……」
ふたりは後戻りをし、曲がらなかった分かれ道の左側へと進んだが、そっちは行き止まりだった。
仕方なく、魔物のいる場所へ戻ってきたふたり。
「テルド、ここを上手く走り抜けよう」
「え、まじ?」
「ここまで来たんだ、俺は先に進みたい」
「……分かったよ、しゃーねーな」
ふたりは剣を構え、一斉に走り出した。
魔物もすぐにふたりに気づき、足を踏み込んだ。
「蹴りの構えだ!来るぞテルド!」
ヒュノは叫びながら、走るのを止めなかった。
斜め上向きに飛んでくる蹴りを華麗にかわし、そのまま魔物をかわして奥へ走って行く。
ただ、テルドはそれで止まってしまった。
「テルド!」
ヒュノは助けに行こうと走るも、魔物はすぐ背後を振り返って、左腕をなぎ払った。咄嗟に剣を構えて防ごうとするも、背中から思いきり壁に叩きつけられ、道の左右を流れる水に落ちてしまう。
流れが早く、ヒュノは力を振り絞って急いで上がる。
「ヒュノ!上!」
「……っ!?」
ヒュノがすぐ上を見ると、魔物の拳が飛んできた。
横に転がり、なんとかかわすが、魔物はもう次の一撃を構えている。
そこへテルドが攻撃し、矛先を自分に向けてくれた。
ヒュノは急いで立ち上がり、走るも濡れた靴が滑り、そのまま転んでしまう。
「ヒュノ!行け!」
テルドがヒュノを見てよそ見した時、魔物の蹴りが直撃する。テルドはそのまま後ろに突き飛ばされた。
「このままじゃ、くっ!」
ヒュノは咄嗟に走り、魔物を斬りつけヘイトを向けさせ、テルドの方向に走って行く。テルドの腕を引いて立たせ、そのまま走った。
テルドはふらふらとした足取りで、ヒュノに引っ張られながら走って行く。出口付近、ヒュノはテルドの腕を放し、叫んだ。
「走れ!」
テルドはふらふらと走りながら、奥に向かった。
奥の高さは、このままのは通れない。
魔物の高さは、この部屋のみ……
あれ?
「どうやって……湧いたんだ?」
小さかったのが、ひとりでここまで成長した?
不自然だ。
魔物が一匹もいなかったのも不自然だ。
何かある、この遺跡には。
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