02話 魔物遭遇と歴史
テルドは止まって、静かに謝った。
「すまん、目が合った」
ふたりの先には、茶色い毛で覆われた魔物。
2足歩行で大柄、熊のような魔物だ。
「……俺たちなら、いけるっしょ」
「おうよ」
ふたりは剣を構えた。
魔物は目を鋭くさせた。両者とも、戦う気は満々だった。
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その頃、村の図書館の扉の目の前には、分厚い本を抱えたシウが立っていた。
「シウ、おはよう」
「おはようメイアちゃん」
メイアは腕を後ろで組み、ゆっくりと顔をのぞかせた。
その目は、持っている分厚い本に向けられていた。
「すごい本読んでるんだね」
「うん」
「面白い?」
「面白い……っていうのかな、歴史の本なんだ」
「歴史?」
「メイアは、魔法って信じる?」
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「テルド、そっち行った!」
魔物の背後にまわったヒュノは叫ぶ。
魔物は全力でテルドの方へ向かって行く。
テルドは片手剣を両手で持って構えた。
あのスピードと威力の攻撃を、かわさず防ごうとしているのだ。
「テルド、それはまずい!!」
「っ!」
テルドは、ギリギリの所で受け身を取って攻撃を避けた。
魔物は、ぎっと後ろのヒュノを睨むと、『グオオオ!』と吠え、ヒュノめがけて走ってきた。
「ヒュノ!」
「任せて!」
ヒュノは剣を構えた。
魔物が目の前まで来たら急いで避け、斜め後ろから魔物の足を斬りつけた。
3回ほど、魔物の左足首を斬りつける。
魔物は爪を振り上げ、ヒュノ目掛けて振り下ろしてくる。
ヒュノは剣を縦に構え、その攻撃を受け流した。
その背後から、テルドが魔物の腕目掛けて剣を振った。
「いけるぞ!」
「うん、勝つよ!」
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図書室の開く前。
扉の前でシウとメイア話していた。
「魔法?」
「数10年前、ひとりの魔法使いの少女が現れたんだ。城下町で兵士をしていた青年は、森の中で彼女を見つけたんだ。魔物に襲われた時、彼女は魔法を使ったらしいんだ」
元兵士・アヴァルと、
世界に災いをもたらした魔法使い・ルナ。
シウは、ふたりについての本を毎日少しずつ、読み進めていたのだ。
「それでね、その少女は世界で唯一魔法を使える謎の者として、国に招かれた。だが、その魔法の力を聞きつけた帝国が、少女を自分らのもモノにしようとした」
メイアは小さく頷く。
「戦争が起きたんだ。そして、兵士は魔法使いの少女、ルナを連れてひっそりと逃げた。ふたりは旅に出たんだ。旅の途中でいろんな仲間が増えた、でもその仲間も追ってくる帝国兵と戦っては、命を失う者も少なくなかった」
その時だった。
内側から扉が開いた。
「……話は飛ばすけど、仲間のひとりにお洒落な女性がいたらしくてね、ルナはその女性のアクセサリーに魔法の力を、1つずつ移したらしいんだ。合計10個……そのうち3つは帝国に渡ってると言うけど……本当かどうかは分からない。でも」
「でも……?」
「この本によると、どうやらそのひとつは、この近くにあるみたいなんだ。まだ最後まで読んでないんだけどね」
メイアは本を見て、問いかけた。
「それって、随分ぼろぼろの本なんだけど、誰が書いたの?」
「……兵士アヴァルの仲間の人らしい」
「実話かもしれない、ってこと?」
シウは、頷いてそのまま図書館へ入っていった。
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魔物の腕からは血が流れる。
また大きな声で吠えると、ヒュノ向かって襲ってくる。
ヒュノは身を低くしながら滑り込み、脇の下を斬りつける。
テルドもすかさず、背中の2回斬りつけた。
魔物の体力は、痛みのせいか減ってきてるみたいだ。
息が荒くなり、動きもだんだんと鈍くなっている。
「はぁぁっ!」
ヒュノは声をあげ、魔物の胴体目掛けて複数回斬りつけた。
その早技に、テルドは目を丸くした。
魔物はズゥゥンと音を立て、倒れた。
「……ふぅ、討伐完了」
「お前、すげえな」
「ん?まあね」
「んじゃ、行くか。もう魔物とは会いたくないぜ」
ふたりはなるべく草むらに近い場所を歩いた。
魔物がいては、身を低くして移動する。
そして。
「ついた、ここが洞窟か」
テルドは、小さく空く穴に向かってそう言った。
「洞窟っていうより、なんか洞穴みたい」
ふたりは並んだ。
そして、唾を呑み、頷いた。
「行こう」
ちょっと、戦闘描写入れてみました。