00話 動き始める、滅びの歯車
誰かの話し声が聞こえる。
ゆっくりと目を開けると、天井が見えた。
薄暗い天井……ここは遺跡の中だ。
少しずつだけど、自分が眠りにつく前の記憶が蘇ってくる。
☆☆☆☆☆
月も星も見えない、分厚い闇雲に覆われた空の下。
大剣を持つ一人の青年と、真っ黒な竜皮のコートを羽織った大剣を持つ男が、私の目の前で、その大剣を何度も何度も火花を散らしながら交えていた。
「ルナ!!」
青年が、私の名前を叫ぶ。
私は、何かを両手で抱きしめながら彼を見る。
「あの場所へ!飛ぶんだ!」
「でも!」
「俺は大丈夫、必ず!お前の所に帰る!俺を信じろ!」
「……わかった。絶対、待ってるから!」
私は、自分自身に魔力を込めた。
「逃がすな!!!!」
コートの男が叫ぶと、その遠く離れた男の背後にいた弓矢を持つ男が、急いで矢を引いた。
私は、はやく転移魔法が発動するように、よりたくさんの魔力を込めた。
シュンっ!と、ルナ目掛けて黒い矢が飛んでくる。
私は怖くなり、反射で目を閉じた。
だが、痛くなかった。
ゆっくりと目を開けると、両腕を左右に広げ、こちらに面を向け庇う青年の姿があった。
「アヴァル!!」
「俺を超える英雄を……頼んだ」
「アヴァ……!」
その瞬間、私の身体は光に包まれた。
☆☆☆☆☆
そう、私はこの遺跡の中で眠りについた。
どれくらいの年月が過ぎたのだろう。
私のせいで。
唯一、この世界で魔法を使える私のせいで。
この力のせいで、世界は混乱へと向かって行った。
何度も、何度も自分を責めた。
その度に、彼は私を励ましてくれた。
10の属性の魔法を、10のアクセサリーに込めた。
共に数年間、旅をした女性が大切にしてたアクセサリー。
「なんだろう、この本と、この赤い指輪」
……あぁ、ダメ。
それに触れたら、私は目覚めてしまう。
そして、その指輪。付けたら不幸になってしまう。
ふたりの少年のうち、片方の少年が本に触れた。
その時、私の視界は白い光に包まれ、勢いよくどこかへ飛んだ。
滅びと争いを呼んだ魔法使いは、再び世に解き放たれた。
――お前の所に帰る!俺を信じろ!
世界のどこにいるか分かんないけど、
その言葉を信じて、探す旅に出ようと思います。
世界はこれから、再び、
争いの線路を辿っていくでしょう。
0話、読んでいただきありがとうございます。
是非、次の話も読んでいただけると嬉しいです。
文章力皆無なので、誤字や、「?」という表現もあると思います。
温かい目で、柔らかい想像力で読んでいただけると嬉しいです。