表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『好き』がすれ違う残酷な愛の告白(男の娘と僕っこ少女。片想い)

作者: 飛鳥井作太

百合なのか、異色男女になるのか悩みましたが、二人とも自己認識は『少女』なので百合にしてます


 彼……いや、彼女は、誰よりも可愛らしい『少女』だった。

「す、好き。私、奏くんが、好き。恋愛として」

 背も高く、体格はがっしりめ。顔も完璧な男顔ではあるのだけれど、それでも、彼女は『完璧な』少女だった。

 いつも身に着けているロリータ服は、いつだって新品のよう。皺も、フリルやリボンの乱れも無い。

 メイクも、綺麗な瞳を活かした愛らしく、かつ違和感のあまり無いもの。

 言葉遣いも美しく、彼女が話すと場がまぁるく和む。

 何より、ただただ、彼女は優しかった。

 誰かが失敗しても責めず。泣いている人がいればそっと寄り添い。失言を受けても、きちんと諭しはすれど、基本は笑って流せる鷹揚さ。

 非の打ち所がない少女。

 けれど、僕は。

「……ありがとう」

 自分の、紺色のジャンパースカートを見下ろしながら、

「そして、ごめん。その気持ちは受け取れない」

 そんな彼女を、傷付けるのだ。

「僕は……前も言ったように、誰にも恋愛感情を抱かないんだ。類のことは大好きだけど、でも、友だちとしてなんだ」

 お気に入りのジャンパースカートは、フリルが少なめだけれどクラシカルで上品なもの。パニエで膨らませると、まるで貴婦人のドレス。これを着ると、いつも不思議と勇気が湧いた。何も怖くなくなる。

 けれど僕は今、顔も上げられないくらい、怖い。

 優しい彼女を、親友の彼女を、否定しなくちゃいけない。

 そのことが、怖い。


 ……ちがう。

 僕は、そんなお優しい人間じゃない。


 否定して、そのあと、彼女が僕から離れてしまうのが怖いだけだ。

 彼女を、大好きだから。

 友だちとして、これ以上ないくらい、大好きだから。

「ごめん」

 意味の無い謝罪が、口を滑る。

 ごめん。ごめん、傷付けて。

 でも、どうか。

「……奏くん」

 俯いた視線に、彼女の手が入って来た。

「どうか、謝らないで」

 彼女の手が、そっと僕の手に触れる。

「私が奏くんのことを恋として好きになったのは、私の勝手。そして、それをこうして告白するのも、私の勝手。その責任を取るのは、いつだって私しかいないの」

 顔を上げた。彼女は、微笑んでいた。

「大好き。大好きよ、奏くん。……例え、奏くんが私を好きにならなくても。両想いになれなくても」

 綺麗な瞳に浮かぶ涙は、まるで水晶のよう。

「……こんな大事な気持ちをくれて、ありがとう」

「こっちこそ」

 その温かな気持ちには応えられないけど、

「ありがとう」

 ぎゅっと手を握り返した。

「えへへ。こんな告白しといて何だけど、友だちとして改めてまた仲良くして欲しいなって」

「! それは、僕も……っ」

 鼓動が一つ、高鳴った。

 逃がしはしない、と言うように、慌てて言った。

「ずっと友だちで、いて」

 それは、ある意味とても残酷な言葉なのに、

「──うんっ」

 優しい彼女は、やっぱり笑って肯いてくれた。


 END.


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ