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Memoria BLUE  作者: ハスキ
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蒼との邂逅

適当に書いた小説なのでお見苦しい点等もございますが、読んで下さる方がいらっしゃればこれ幸いです。

それはどこまでも突き抜けるような「蒼さ」だった。

その表現のしようもない、途方もない「蒼さ」は、

時として人の心だった。透き通る透明の様でいて、   

その実、未熟なまでに酸っぱく、甘く、若さを表している。


晴天の霹靂を色であらわすとすれば、そんな様な感じに思えた。


           ・・・


 ある夏の事、夢を見た。別段珍しくもない。誰しもが観るありふれた情景。

そこはひたすらにただ「蒼」く、しかし少しでも動けば全てが霧散してしまうかと思う程の儚さをもって。

その場所はワタシの頭の中に広く、どこまでも存在していた。

浮いているでも、沈んでいるでもなく・・・・ただただ漂うばかりの心と体は宇宙へと投げ込まれたかの様な感覚。

ワタシはまだ体感したことがないし全てワタシの頭の中の出来事だけど、どこか違う場所にでもいるような、そんな異質な感覚。そこで意識がプッツリと糸を切るような音と共に無くなった。 

 目が覚めると天井を見つめたままの私。しかしその視線は天井ではなく、「ワタシ」自身を捉えている・・・。

「え・・・・?」戸惑いがちに視線をさ迷わせる。

私が見つめる「ワタシ」の顔は動かず、しかし私自身の視点は右に、左に、俯瞰の立ち居地から、今いる部屋を見回している。

「これって・・・どういう事・・・?」

とりあえず状況の整理をしてみようと自分を落ち着かせ、頭を働かせる。

(あの夢から覚めて、気がついたらこの状態になっていて・・・・・)

どうにも今の状態ではまともな思考は出来なさそうだ・・・。

何より一番の気掛かりといえばこの現状と状態である。

原因がわからない以上、元に戻る方法どころか助けを呼ぶことすらできない。

運良く助けが来たとして、ではこの状態を説明できるかというとそれはムリだろう。

声は先ほどの呟きを発したときに出せることは確認している。思考もできるようだ。

まだ(ギリギリ人間)という状態だろうか?続いて体の動作を確認する、

ワタシはそこである事に気がついてしまった。自分の体が「蒼く」透けてみえるなのだ。もちろん今ベッドで寝そべっている「ワタシ」ではなく、

この俯瞰の状態にいるワタシのことだ。手の指先から足のつま先まで。

胸もお腹もお尻もどこもかしこもが文字通り「半透明」なのだ。

「え?えぇ?こ、これなんなの?私死んじゃったとか?え?どういうこと?」

いや死んでいるのならそもそも意識など無いのだ。ならば今のワタシのこの

状態はどう説明できるのだろうか?

突然、目覚まし時計のけたたましい騒音が鳴り響いた。正直あまり心地いい音色ではないから、騒音である。もうすぐ仕事へ行く時間だ。

そして私は思い出したかのように「ワタシ」を見る。そして

「ワタシ」は起き上がらなかった・・・。まぁ当然といえば当然であろう。

あの肉体の所有権が誰のものにもなっていない今、私が俯瞰から眺めている「ワタシ」の物だった肉塊はおそらく私が戻らない限りそこにあり続けるのであろうから。私はひとまずの安心感に浸る。しかしさらに問題は積み重なっていく

 そもそもこの俯瞰から動けないとはどういう事なのだろうか?体自体は動かせるのに移動がままならないのだ。いやままならないというよりも、

まるで腰が何かに「固定」されたようにそこから動けないのだ。その間にも時計は無常に針を進めていく。もうすぐ朝日が地平線に映える時刻だった・・・。


AM 11:00〜自宅にて〜


 こんな状態において、一つ判ったことがある。

この状態でも人間の三大欲求はしっかりと働いているという事だ。

食欲・性欲・睡眠欲。三つ目はどうにでもなる、

しかし一つ目と二つ目などどうにもならない。

私はここからいまだ動けないでいるし。最初は不思議に思えていたが、

喉に絡みつく渇きのように、潤いを欲しようとする欲望が私の頭からつま先まで全身を駆け巡っていっている事に気づくまでそう時間はかからなかった。

そう、ワタシは今退屈で仕方がなかった。

ただ浮き続けるだけなのだ。正確には天井に固定されているかのような感覚だが。釈迦になるため悟りでも開けというのだろうか?

生憎ワタシは宗教には一切興味がないので、全力でお断り願いたいものだが。

ただいつまでもこうしていればいずれこちらの理性が持たなくなるのも時間の問題だ。

私は再び思考の渦に沈み込んでいく。そうしていれば

まだ自分自身を保てそうな気がしたからだ。

深い、ただただ深く暗い海の底に似た熟考の中、ある断片が記憶の底から甦った。

 暑い。むせ返るような暑い気温と、ただでさえ馬鹿みたいにでかいのに、

さらに嵩を高く広く大きくしようとする入道雲を讃えた青い空・・・・。

麦藁帽子を被った幼い少女、帽子のツバで出来た日陰から空を眺める目は

幼さと純真に満ちている。そばを歩く男の子が雲の方を指で指している。

「アレはね、入道雲って言うんだってさ。」

彼は私に教えてくれた。思い出した・・・。

これは私が子供の頃まで過ごしていた田舎の記憶だった。

その頃の私はどんなだったのだろう・・・・今では全く思い出せない。

思い出せたのはどうやらここまでらしい。

終わりをつげるように頭の風景は明滅をはじめる。

そして、またあの「蒼」の風景が広がる。

しかしソレは全く違うもののように感じた。

ソレは私に向かって話しかけてきたのだ。

「ヤァ。ヒサシブリダネ、トイッテモ、ツイサッキアッタバカリダカラ"久シブリ"ハオカシイカナ?」

風景が喋ってる・・・。そうとしか感じられないほどソレは異常だった。

私のなかで何かのスイッチを押したような音が、カチリッと音を立てたような気がして。

そして、私の記憶逆行という旅は始まった。

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