少女はひとり、呆然としていた。
彼女は友達と遊んだ帰り道、駅からの歩き慣れた道を歩いていた。
目を合わせば、両親に何度も「一人で暗い道を歩かないように」と言われてきたので、出歩く時は無意識の内に、すれ違う人も適度にいて、しっかり明るい道を選んでいた。
「おわっ」
思わず声が漏れ、視界が揺れる。
何もないところでつまづくことも、生きていれば何度だってある。ただ、ひとりでいる時に転んだりつまづいてしまった時の恥ずかしさといったら。
「……」
少女は友人たちと遊んだ帰りで、今はひとり。
その言い訳を照れ隠しのために口にできる友達なんて隣にはいない。
しかし、何かを言わずにはいられなかった。
転んだ足元。
目を凝らせば、歩いていた舗装された道ではなく、でこぼこな石畳。
「こりゃ転ぶわ」
見上げれば小さな星だけが浮かぶ新月の夜。
少女はひとり夜の世界で呟いた。
見知らぬ世界でーー
***
「…………きた」
空気が揺れる。
「堕ちてきた」
異世界からの侵入者。
長い間待っていた。
君はまだこの世界では異物。
まだ逢いにはいかない。
まるで身体全体が鼓動しているのかと思うくらい、痛い程に心臓が脈打つ。
ここまできたのなら、あと少しの時間くらい、待ってあげる。
ようやく手に届くところまで堕ちてきてくれたのだから……
読んでいただきまして、ありがとうございます。
少しでも分かりやすく、楽しみやすく、読みやすい作品になるよう、がんばります。