プロローグ
涙が止まらなかった。胸が張り裂けそうだった。
ついさっきまで、笑って話していられたのに今は……。
彼女と付き合うようになってから、僕は幸せだった。
毎日得も言われぬ充実感に溢れていた。
ヤキモチを妬いたり、妬かれたり、嫌な気分になることもあったれけど、それも恋愛のスパイスのひとつだと、笑っていられた。
でも、これは違う……。
「私、鳴とはもう、付き合えない……別れよ」
「え……」
「別に鳴のことが、嫌いになったんじゃないよ?」
「……え、なに……何を言ってるの?」
悪い冗談だと思った。
「他に好きな人ができたの」
「……え……な、何かの冗談だよな、でも笑えない冗談だぞ」
「ううん、冗談じゃない……冗談じゃないんだよ」
「え……でも……」
「鳴……ごめんね……」
「……え……嘘だろ」
信じたくなかった。
「ううん、嘘じゃない」
「嘘だ、嘘だ、嘘だ!」
信じたくない。
「違うよ鳴、嘘じゃない」
「だって、僕たちずっと一緒だったじゃないか……そして……これからも」
「違うよ鳴……私たち、これからは別々の道を歩くんだよ」
別々の道……考えたこともなかった。これからもずっと一緒だと思っていた。
「……考え直せないの?」
「……もう気持ちは戻らないよ? 鳴はそんな私と付き合っていたいの?」
これ以上何も言えなかった。
彼女に気持ちが無いと知った以上、受け入れるしかない。
「さよなら鳴、今までありがとうね」
彼女は涙ながらも笑顔をうかべ、僕に別れを告げた。
僕は何も言えず、その場に立ち尽くした。
「ありがとう」なんてとても言える気分じゃない。
笑顔なんてとてもじゃないけど作れない。
でも、彼女は笑顔で「ありがとう」と言った。
それが彼女と僕の、心の距離なのだろう。
僕は恋愛って素晴らしものだと思っていた。
彼女の事を想うだけで幸せな気分になれた。
でも、それは恋愛のひとつの側面でしかなかった。
頭の中も心もぐちゃぐちゃだ。
涙がとめどなく溢れてきて、どうすることもできなかった。たくさんの通行人に見られていたのかも知れないが、僕は声を上げて泣いた。
こんなにも……こんなにも……こんなにも辛い思いをするなら、
恋愛なんて、もういらない。
本気でそう思った。
どん底まで落ちてしまった鳴ですが、物語はここからはじまります。
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