8話 神と作戦会議
「ただいまー。疲れたー。お腹すいたー」
家である居住空間の玄関に現れるとすぐ、那月はソファーに向かい、着ていたジャケットを脱いで座り込んだ。
そして那月の左髪につけられたウサギのアクセサリーも、長い耳がぐったりと垂れ下がり疲労を表していた。
「お帰りなさい那月。今日は大変だったわね」
惣神を先頭に他の神たちも出迎える。
「おかえり那月。スピールの手入れは任せてまずは休むといい」
「さよう。三十三人の治療を一人一人したのだからな」
「ガーッハハハ、引くときは引かねばな」
「疲れて動けなくなってはいけないでッス」
「那月、汗は大丈夫?」
「欲張っていいことはねえからな。引き際が肝心だ」
「うん、そうするー。汗はとりあえず大丈夫。タクロー、何か美味しいものをお願い」
神たちの声に答えて、那月は宅神に食事の用意を頼んだ。
「了解でッス」
宅神がそれを受けると、那月の前にあるテーブルに三十センチほどの皿に盛られた料理が現れた。
「焼うどんでッス。中央の山椒味噌とあわせて召し上がるとよいでッス」
「うわあ、おいしそう。いただきまーす」
皿の右横にあるウサギの箸受けからピンクの箸を取ると、那月は言われたとおりに味噌をからめて麺を口に入れた。
「はふ、うん……、おいしい」
「それは良かったでッス」
喜ぶ那月に、宅神も笑顔にななる。
「さて、那月が食事休憩をしている間、あのゾウ型夜獣をどう対処するか考えないとね」
そう言って、銃神が他の神たちと作戦会議を始めた。
「通常、ゾウを仕留めるのはライフル弾やマグナムなどの、高威力の物を使用する。スピールならば重光弾がそれに相当するが、どう思う?」
「うむ。確かに夜獣は、人や獣の肉体的な特徴を持っている。だがその一方で魔物の部分も併せ持つ。見た目以上に存在力を持っているとみていいだろう」
「ガーッハハハ、確かに。夜獣にも投げや、打撃、関節をやれるが、あれは考えん方がいい」
「それじゃあ普通に、スピールだけの攻め方でいいってこと?」
「いえ、それは無理だと思います」
銃神、呪神、武神の意見から見えてくる結論に衣神が言うと惣神は否定した。
「先ほども見たように、あの長い鼻から負素を放ちます。それは攻撃にも使える事を意味しています」
「なるほど。それでは負素を放つ前に浄化させるか、負素を受けない所からの攻撃でッスね」
「鼻から出す前だったら一発で仕留めねえとな。魔力を嗅ぎつけ、攻撃をしかけた那月へ襲いかかってきちまう」
「現在、最強の攻撃手段は重光弾だが、他の夜獣でも五発以上撃って消している。一発でとは無理だろうね」
「ガーッハハハ、頭を撃っても存在力がある限り再生するようだからな。急所もあてにならん」
「じゃあ、前やったみたいに転移射撃? でもあれ、あんまり効かなかったんじゃなかった?」
「しかも、重光弾では魔法円も消し飛ばしてしまう。炎のように滑らせる事ができないからな」
「仕掛けて撃って、仕掛けて撃ってじゃ割に合わねえわな」
「普通に射撃しても何れ接近されるのは予想できる。となればいかに夜獣を攻撃させないかだね」
宅神、商神、銃神、武神、衣神、呪神から、商神、銃神と意見を出す。
そして神たちが、うーん、と考えていると那月が箸を止めて言った。
「それだったら、吹っ飛ばすといいんじゃない?」