6話 神たちの想い
マンションの一室と変わらぬ居住空間。
薄暗い部屋の中、那月はベッドで静かに寝ていた。
パジャマ姿の寝顔はとても無邪気で幼く見える。
成人女性とは思えぬほどに。
そして、那月を取り巻く七柱の神はそれを見つめ続けている。
惣神女、呪神女、銃神男、宅神男、衣神女、商神男、武神男。
身体はなくとも常にある。
「よく眠っています」
「仮にとはいえ、一度死んでいるからな。いまは身体を休めねばならん」
「生きている限り魔力が溢れ出る魔揺を止めるためとはいえ、心が痛む……」
「起きたらおいしいものを食べさせてあげまッス」
「あの子は優しい子。あの時、ビルや壊れた車のことまで考えてた」
「金がかかるとかじゃねえ。本心、真心でだからな」
「ガーッハハハ、しかも自分が死んだ事よりも、儂らに手間をかけさせた事に落ち込むくらいだからな」
「あの子は全く変わっていません。あの時からずっと……」
「惣神--、センセーほど那月を知っているわけではないが、それはよく分かる。あの子は本当に良い子だし義理堅い。何せ、スピールも僕が探理官だった頃の物を使っているんだからね」
「そんな子を放っておくわけにはいかん。那月は優しいが危ういのも確かだ」
「だから俺らは人間を捨て神になった。損得抜きにしてな」
「現実の世界では災害を引き起こす魔獣のような扱いになる。制御できなければ始末。当局はそう判断してしまう」
「みんなのために苦しんで、助けた子が殺されなきゃならないなんて、納得できない!」
「帰る家があり、笑顔でいる方がいいに決まってまッス」
「ガーッハハハ、まったくだ。邪悪を倒し、皆を救って何が悪い」
「ゆえに我らが那月の居場所を見つけた。まあ、創ったとも言えるが」
「それが当局の力が及ばない、精神世界の一つ、世界の夜です」
「夜は暗く、全てを闇に隠し、存在しても見えなくなってしまいまッス」
「それは当然、負の感情や思考も含まれる。人を暗黒へと誘う魔の元となる」
「その魔の元を具現化した夜獣を、那月がスピールで斃し--」
「俺が都市神から秩序を守った報酬、那月の稼ぎとして神貨を預かる」
「仕事をして、美味しいものを食べて、きれいな服を着て、私たちといる那月に寂しい思いはさせない」
「確かにな。だが、いくら神貨があったところで母親や弟には会えねえ。なんとか代わりにならなきゃな」
「ええ、この子の笑顔のために私たちが支えなければなりません」
決意を新たにした神たちは、温かく穏やかな表情で那月を見守り続けた。