4話 感謝の笑顔
「あれ……」
気がつくと那月の目には見覚えのある天井があった。
そのまま周囲を見回すと、玄関、ソファー、テーブル、テレビではない四十インチのモニターがあった。
どれも那月が日常で使っている物だ。
あらためてここが自分の居住空間、家であることが分かった。
そして自分が衣神の選んだピンクのパジャマを着てベッドに寝ている事も。
「気がつきましたか」
そう声をかけたのは惣神だった。
「あ、センセー、おはよう」
愛称を使いながら起き上る那月。
「気分はどうだい?」
「とくに、なんともない」
銃神の問いかけに那月は小さく答えた。
「何か飲み物を用意しまッスか?」
「それじゃあ、お湯」
「了解でッス」
そう言うと宅神はベッドの横にあるサイドテーブルに、白湯が入った那月のお気に入りのマグカップを出現させた。
「ありがとう」
ゆっくり手に持ち、那月は静かに口へ運んだ。
適温の白湯が体内にしみこんでいく。
「ふう……」
幸せの息を吐く那月。
「その様子なら大丈夫ね」
「ガーッハハハ、那月は一日寝てれば何でも回復する」
「とりあえず、安心した。稼いだはいいが無理をした形だったからな」
衣神、武神、商神が、ほっとした声で言った。
しかし、商神の言葉で那月は思い出した。
「あ、私……、マヨちゃんになったんだ……」
少し落ち込んだ顔をさせながら呟いた。
那月の言うマヨとは魔揺のことであり、魔力の異常流出入とそ
の状態をさす。
「魔力は安定したが、身体はまだ疲れいているだろう。いまは休め」
クールながらも温かさを感じる声。
「うん、そうする」
自分を気遣う呪神に、那月は素直に答えた。
「何も慌てることはありませんからね」
「そのとおり」
「ガーッハハハ、動くだけが全てではない」
「もう少し落ち着きましたら美味しいものを用意しまッス」
「まずは元気の回復」
「心と身体、両方あって資本だ。どちらが欠けても全力は出せねえ。休む時は休む、だな」
他の神も気持ちは同じ。
「みんな、ありがとう」
那月は感謝の笑顔を見せた。