第6話 会議に参加したらまさかの結末に、、
今日の仕事は午前中は勇者が倒したデータ入力を手伝う。午後からは今後の魔王城についての会議に参加する。
「やまだー!この資料の入力をしてデータを俺のパソコンに送ってくれ」
「わかりました。なるべく早く送りますね。」
そう!初日から3日間徹夜した
全く意味のないデータ入力が役に立つ時が来たのである!
(ゴールドゴーレムばっかり倒してるなぁ!そう言えば勇者はお金に困っていると言っていたがゴールドゴーレムはお金がいっぱいもらえるのかな?)
「そう言えば石田さん!勇者は武器を買えたんですか?」
「確か買えたと書いていたわね。なんかゴールドゴーレムを乱獲して、【お金貯まったぞー!】っツブヤッキーで呟いてたわよ!」
「ゴールドゴーレムはそんなにお金になるんですか?」
「詳しくは分からないのだけども、体のどっかの部分が純金なのよ。でもそもそもの数が少なくて、生息してる場所もあまり知られてないのよ。知られたら絶滅しちゃうからね。」
(体の一部が純金?それは確かにやばいな。生息してる場所が知られてないのに勇者は良くこんなにも倒したな。相当のお金を貯めて強い装備を買いたかったんだろうな。)
データ入力を終え田中さんにメールで資料を送る。A4用紙5枚だけだったが、両面にびっしり手書きで書かれていたため相当時間がかかった。何故なら手書きゆえの癖字や読めない擲り書き(なぐりがき)のものも多くあり解読に時間がかかったのだ。これを田中さんは3日間ずっと帰らずにしていたのかと思うとゾッとする。
少し休憩して会議の準備をする。
会議室で資料を並べて置いて、プロジェクターの確認と席の数を確認する。きょうの会議はとても重要なものになるらしいが、いったいどんな会議が開かれるのだろうか?
会議の準備を終え、お昼ご飯を食べに食堂に行く。もちろん食べるのは日替わり定食だ。毎日これを食べても飽きない。何故なら日替わりだからだ。日替わりといっても7種類のメニューをローテーションする。それでも良いのだ。食にこだわりは無いのだから。
「よー山田!仕事は順調か?」
先輩社員が話し掛けてくる。
「順調ですよ。最近色々させてもらってますので。その分帰れないことも多いですが。」
先輩は笑いながらどっかにいった。先輩は長い期間魔王城で働いているベテランだ。因みに一番のベテランは石田さんである。石田さんはSNSなどで情報を集める係で常にツブヤッキーなどを見ている。
昼ごはんが終わり会議前にトイレに行って、準備を終わらせ会議室に向かう。
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「資料は全員分配られているかな?」
「はい」と10人が次々に返事する。
「それでは会議を開始する。」
山田はびっくりしていた。とても重要な会議とは聞いていた。何故なら全員が常務以上と監査役なのだ、そんな会議に俺が呼ばれたのだろうか?
「少し待ってください!魔王様こいつは誰なんです?」
「この子が異世界から召喚した山田くんだよ。」
ざわざわさわ……。
(無茶苦茶ざわざわしてるよー!)
「その小童があの山田くんですか?とても貧弱そうな人間ですな!」
むきむきの老鬼が俺のことを指差して笑う。
(確かに貴方からしたら誰でも貧弱でしょうね)
「その子はとても優秀ですよ。私はとても助けられてます。同じ部署で作業していて、仕事を手伝ってくれるし、あと、とても賑やかになりました。」
(この人を直接見たことはあまり無いが、しっかり見てくれているんだな。)
「ただ、仕事が終わってないのに帰ろうとするのはどうかな?本来は仕事が終わらないと帰ろうって考えにならないのだがね?残業して当たり前なんじゃ無いかな?休みなんて1週間に1回あればいいわけだし」
(久しぶりに聞いたブラック発言!やばい会社じゃん!)
「まぁまぁ最初は仕方ないよ!そのうち帰りたくても帰れない量の仕事を押し付けるわけだから今は我慢だよ、」
魔王がさりげなくえげつない事を言う。
(今の時代で残業は当たり前ではないでしょー!まぁまぁじゃねーよ!有給休暇の義務化ですよ!)
魔王はキリッとした顔で話し始める。
「少し話が逸れたが、本題に入るよ。今日集まってもらったのは勇者が新しい武器と防具を買ったみたいで、次の町に向かうみたいなんだ。その町は魔王城の近くではないにせよ少しずつ近づいてきているのも事実。」
「勇者なんて殺しましょー!」「ビビってるんですか?」「今の魔王城なら大丈夫ですよ!」「そうだ!総攻撃を今の段階でしましょう!」
などなど、各々が好き勝手に喋り出す。
「魔王様よろしいでしょうか?」
老鬼が手を上げて魔王に尋ねる。
「勇者をわし倒しに行かせてください。そのかわりに倒した暁にはボーナスの金額を増やしてほしい。」
(よくある光景だな。漫画とかでも見たことあるな。唯一違うのは【ボーナスの金額をあげる】が想像してたより上に行ったな。本来なら【私を魔王にしてください。】とかの昇進を言ったりすると思ってたけど、そんなお金に困ってるのだろうか?)
「老鬼が行ってくれるなら大変助かるよ。ただ事はもっと深刻になる可能性がある。もし老鬼がやられたら上層部からはもう1人も出せない。何故なら魔王城の経営が難しくなるからね。他の会社員たちでは勇者を止めることはできると思うが倒すことは出来ないだろう!」
皆んなが険しい顔になる。どうしても勇者を倒さなくてはならない。でも倒せる者が限られているのだ。
(でも漫画とかゲームなら中ボスが何人もいて、最終ラスボスの魔王になるはずではないのか?しかもラスボスは大体倒したら変身する。)
「下の者たちをトレーニングして、戦闘特化型の者たちを育成するしかなかろう。急には強くはなれないが、トレーニングをしたらまともな奴は何人かできるだろう。」
1人が提案した。すると魔王は満面の笑みで頷いた。
「そうなんだよ!人材育成を強化しようと思っている。その責任者を山田くんにお願いしたいんだ。」
ざわざわざわざわ
会議室にいる魔王と山田以外の殺気があふれる。
「なぜ?こんな貧弱の人間が我ら魔物のトレーニング責任者なのですか?こんな腕が木の枝の奴にトレーニングしてと言われて、納得してやってもらえますかね?私の方が向いてると思うのですが?」
(おっしゃる通りでございます。)
「私の意見に文句があるのかな?」
魔王の殺気が誰よりも強く発せられる。
山田は鈍感なので、殺気などは微塵も感じない。他の魔物たちが冷や汗を流しているので相当なことが起きているのは確かだ。
「では、山田くん人材育成を頑張ってくれ。まずは育成プログラムを作成して私に提出してください。今週中にお願いね。」
魔王が不敵な笑みでこちらを見る。
「最善の努力はいたします。役にたたないと思ったら直ぐに退任してください。」
(とりあえず、適当にトレーニングの本を読んで作成して提出しよう。)
「その覚悟しかと受け止めた!しっかり精進した前!」
(仕事を貰えるならありがたい事だ。やるからには徹底的にやってやる!)
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山田は重要な人材育成のチャンスを手に入れた。