第5話 休日に同僚と出かけたのは初めての経験
今日は初めての休みなのだ!
同期の鬼の長谷川と一緒に買い物に行く。
佐藤さんに滞在に必要なお金は前回もらったので、服や日常品を買う予定だ。
「山田くんってどんな服装が好きなの?」
「特にこだわりはないよ。着れたらいいと思ってる。長谷川はどんなのがいいんだい?」
素朴な疑問だった。鬼が着る服ってトラ柄のパンツのイメージか茶色いボロボロの布を腰に巻いてるイメージしか無い。
「僕はダボダボの服がいいなぁ。あまりピチピチだと体のラインが鬼になるじゃん?あと帽子は被りたいけど穴が空くんだよねー!せっかくいいの買ってもツノが邪魔するんだよ!」
(体のラインがきになるって女子か!)
「でも、寝るときは何も着たくないから布を腰に巻いて寝るだけだね。」
はい、イメージ通りです!
そんな会話をしながら服屋さんに着いた。
「すごいいっぱいあるねー!僕が着れそうな服あるかなぁ?」
長谷川の体格は皆さんが想像してるムキムキをちょっとだけムキムキにした感じである。
(ダボダボの服はかなり大きいサイズじゃないとダメだと思うのだが)
そんなことを思いながら服を物色している。
長谷川はすごいオシャレに気を使っているようだ。俺は服なんて肌が隠れればいいと思っているので、オシャレなんて全くわからない。産まれてこのかたファッション雑誌を読んだことはない。
「山田くんこれなんて似合うかなぁ?」
長谷川が体に服を当てて俺に聞いてくる。
「あー。それでいいんじゃないか?」
あまり見ずに棒読みで答える。
「もー!もっとちゃんと選んでよー!」
「分かんねーもんは分かんねーんだよ!着たいやつ着ればいいだろ?」
「せっかく一緒に来たんだからもっと一緒に楽しもうよ!」
(……デートか!付き合って何ヶ月もたった時にアウトレット行こうか?ってなんとなく来て、せっかく来たならなんか買おって決めた彼女か!)
長谷川の服選びに結局2時間以上付き合わされた、
買い物袋4つ分買った長谷川に対し
俺は普通にTシャツ何着かとGパンで小さい袋1個だった。
服選びも終わりご飯を食べようって話になった。
「この辺の名物ってなんなの?」
こっちに召喚されてから会社から一歩も出ていない俺にとって初の外食になる。そりゃ名物の一つや二つ食べても良いでしょ!
「名物は間違えなく【ホルモンヌ】だね。」
「ホルモンヌ???」
「そう!豚のホルモンを甘辛い味付けでカリカリに焼いた絶品なんだよ!おやつでもいけるし、おつまみとしても絶品だね!」
「豚のホルモンなんだね。クセがあるから好き嫌いが別れるのに。クセがない牛のホルモンとかもあるのに」
「そうだね!豚の方が安いからね。
昔は人の内臓とかでやってたみたいなんだけど、3世代前の魔王から人を食べる事は禁止になったんだ、、まぁ禁止を無視して、村人を襲いに行く魔物はいるみたいだけどね。」
(なるほど、イベントとかで村を襲ってくる魔物達は禁忌をおかしてまで食べに来ているのか!、、召喚されたのが、昔じゃなくて良かったわ!)
「じゃあホルモンヌを買いに行こう!」
そして、長谷川オススメのホルモンヌ屋さんに買いに行く。
「ホルモンヌ2個下さい!」
長谷川が少年ののような笑顔で注文してくれた。
「ホルモンヌ2個おねがいしまーす!少々お待ち下さいマセーー!」
店員さんの活気ある声がとても良い!
5分ほど待つと待望の出来立てのホルモンヌが来た。
「お待たせしましたー!2個で500マソになりまーす!ちょうどですね。あざーーしたーー!」
(マソというのはこちらの通貨の単位だ。)
俺と長谷川は少し魔物が少ない公園に移動して、ホルモンヌを食べる。
甘辛い味なので、ビールかご飯が欲しくなる味だ!こてっちゃんを、カリカリにしたのを想像してもらえると助かる。
「いやー!今日は満喫した1日だったなー!」
「そうだね。いつも家族で買い物に行っていて、友達と買い物に来た事なかったから、とても楽しかったよ!」
(友達?俺たちは同僚じゃなくて友達なのか?まぁこっちでは友達はいないから友達と思ってもらえるなら嬉しいな)
「そう言えば、山田くんって人間なの?」
「そうだけど?なんで?」
「人間が魔王城で働いてるからなんでかなと思って?そもそも人間は魔王城には入る事が出来ないんだ。人間で入れるとしたら勇者とそのパーティーだけなんだよ。それなのに山田くんからは特殊なオーラとかそんなもの何も感じないんだ。」
「長谷川には話すよ。俺は魔王(吉田)と秘書(佐藤)に召喚されてここに来たんだよ。本当は別の世界に住んでいて、普通に会社でサラリーマンをやっていたんだ、、、定時で帰ってご飯食べて、ゲームして、夜中に寝て、朝起きて出社して毎日毎日それの繰り返しだったんだよ。
平凡な毎日をいつも通り過ごしていた、
ある日玄関を開けたら長い廊下にでて、急に面接をされて、その時に実は長谷川とも出会っているんだ。そして色々あって今こうして長谷川と休日を過ごしてるんだよ、、」
面接の時に会釈をされて、良い鬼もいるんだなと、思ってそんなに日にちもたっていないのに、俺は信じてもらえると思いながら真実を話した。
「……山田くん」
長谷川は真剣な顔で俺の顔を見ていた。
何を考えてるかはさっぱりわからない。
人の顔色を見て生活してこなかった俺が、鬼の表情を読み取れるわけがないのだ。
「山田くんの言ってることは難しくてわからないよ。もう一回わかりやすく言ってよ。」
信じた俺が馬鹿だった。
長谷川が馬鹿なのは薄々話し方で分かっていたが、まぁいきなり異世界から召喚されて、ここに来たって言われてもそりゃ信じないわな!
俺は立ち上がり空を見上げながら
「ごめんごめん!今の話は嘘!実はすごい貧乏で、お母さんが無理して働いてたんだけど、倒れちゃってどうしよってなってたんだけど…。
そんなある日、村が魔物に襲われて、なんとか逃げていたんだけど、捕まっちゃって、、
それから魔王城に連れてこられて、仕事させられてるんだよ!お金を貰えるから仕送りもできるし、俺にとっては良い事だったって事!」
これが無理なら長谷川には説明出来ないな。
そう思って長谷川の顔をチラッとみた。
えっ!無茶苦茶泣いてるじゃん!!
「山田ぐぅんごべんよ!ぞんなにぐるじぃ思いをじでいだなんて、」
長谷川よ、、、ごめん!
「山田くんのお母さんは大丈夫なのかい?」
「あぁ、今は元気になって働いてるよ。仕送りするから家でゆっくりしとけって言ってるんだけどね。まだまだ働けるよって言って頑張ってるよ。」
「僕にも何か手伝えることはあるかい?」
(長谷川よ、嘘なんだが、、無茶苦茶心配してくれるじゃないか!)
「いや!気持ちだけで嬉しいよ!ありがとう。もう時間も遅いし帰ろうか?」
俺と長谷川は帰路につく。
「俺こっちだから。じゃあ!またな!」
「そっちは魔王城の方じゃないの?」
「俺、魔王城に住んでるんだよ!」
「えー!そうなの??牢屋に住んでるって事?」
「牢屋には住んでないよ。普通の一室に住んでるんだ。だって拉致られたんだぜ?拉致られてる状況で、家なんか提供してくれるはずないだろ?」
「魔王城の一室に住んでるの??山田くんすごいよ!僕も一緒に住みたいよー!」
「会社に住んで、何が面白いんだよ!」
「魔王城に住めるのは、魔王様か家臣の人たちだけなんだ!それを拉致された山田くんが、住んでるなんて!」
そう考えると凄いなぁと実感する山田。
たしかに普通に過ごしてたら城に住むことなんて考えられない事だ。
「今度の休み俺の部屋に招待してやるよ。じゃあまた会社でな!」
「絶対だよ!僕お母さんに自慢しとくからね!」
そうして2人は別々の帰路についたのだった。
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山田は長谷川との楽しき思い出を獲得。