05
少し待つが、特に退職希望者は現れなかった。
「よし、次の話に移ろう」
そう前置きし、これからのやりたいことを告げることにした。
「俺は異世界から来たことはすでに言ったと思う。そこには魔法や魔術は一切なく、医学や科学、様々なことが魔術以外で出来る世界だ。この世界ではごく少数しかできないような、空を飛ぶことも、誰もが免許さえ持てば出来る。当面の間、俺はこの世界にその技術を伝えて行こうと考えている。目標は元の世界の一歩先を行く技術と、この世界の魔法や魔術の合わさった結果を見ることだ」
俺がまくしたてるようにそう言うと、全員が顔を見合わせ、バカにしたような目を向けてきた。
予想はしていたが、この世界の者たちからしたら、魔法も魔術もなく生活すること自体が不可能だと考えているのだから、仕方ない。
ちなみに、魔法と魔術の違いは、使用する魔力量や方法によって分けられている。
クリニックと病院のようなものだろう。
「この世界で出来ないことが元の世界で出来ている、というものだって存在している。医学はその一番大きな例として上げることが出来る。リュージュの記憶を読ませてもらったが、強力な細菌による感染症や人の免疫機能によって直すことのできないものに、回復魔法をかけて悪化させている例が多すぎる。これでは治るものも治らない」
「ですが、それを見分けるためにも大掛かりな魔術が必要になり、お金に余裕のある者以外には到底手が届きません。そのための回復魔法なのです」
誰かがそういった。
「そのことはわかっている。回復魔法と一口に言っても、様々な術式があり、その中には痛みや苦しみを抑えるものが存在しているという事も知っている」
この世界には教会があり、教会ではお布施という名の少ない金額でそれらの効果を持つ魔法を使用してもらうことが出来る。
だがお金のあるものは、大掛かりな魔術を使用し、原因を特定した上でそれに見合った魔術を使用し、症状を緩めたり回復させたりしている。
そのせいで平均寿命がかなり低くなっている。
また、平均寿命が低い理由には、魔獣や魔物がいるという事にも関係しているが、説明が長くなるので、割愛する。
「異世界ではお布施と同じくらいの金額で、病気の内容を詳しく知ることが出来る」
「魔法も魔術もない世界で、ですか」
「その通りだ。だが、俺の専門は医学ではない。そのため、かじった程度ならば知識はあるが、直す方法については疎い。よって、魔術と科学を合わせ俺の元いた世界と交流を持つことが出来るようにしようと思っている」
「異世界と交流を持つという事は、行き来出来るようにする、という事ですか?」
さっきとは違う使用人が、そう聞いてきた。
「その通りだ。世界を渡る方法については俺の部屋に送受信の出来る装置を置いてある。時間の流れがどうなっているかわからないが、制作が進めばいつかはつなぐことが出来るようになるだろう」
俺の部屋は、万が一死んだときに備えて、死後50年は部屋にある物品を破壊しないように弁護士と契約してある。50年もあれば、劣化コピーくらいの生産はできるだろう、という算段だ。
もしや、本当に異世界転生をすることになるとは思っていなかったが、用意しておいてよかった。
「今は元の世界にあった物を作り出すことを優先し、魔法と科学を合わせた物の研究が出来るようになることが重要だ。皆には通常の業務のほかに、それらの研究も行ってもらいたい。参加希望者を本日から7日間募集する。参加者には今までの給料のほかに追加で支払い、出来高により追加で払うことも考えている。希望者は工房へと足を運んでくれ。以上で話を終わる」
そう言ってテラスから離れた。
こんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
本当はこればかりではなく、未確認ネカマや朝起きたら(以下略)も更新しなければならないのでしょうが、なかなかそれらに使用できるネタが出てこなくなってしまい、執筆が思うように進まない状態となっております。
なんとかしてネタをひねり出しますので、それまで待っていていただけるとうれしいです。
今後ともよろしくお願いします。
追記:小説の作者のほとんどは感想をもらえると、かなり喜びます。